君は誰 | ナノ

始まりはまるで

始まりはまるで、少女漫画みたいやった









「くっそー!なんでこんな日にカブるねん!」



俺は悪態をつきながら走っておった。あ、勿論本気やないし、軽くな!
この日は日直と放送委員会の通例報告会と、珍しく真面目なテニス部のミーティングの日やった。日直はもう一人の前田っちゅー奴が早退してしまったんが運のつきやった。あいにく、テニス部の方があるから白石は手伝ってくれんし、他の奴らは他の委員会の通例報告会があったりと、手伝ってくれんかった。…学校の決まりで、クラスの仕事>委員会>部活っちゅー優先順位があるから、委員会はサボれんかった。

テニス部のミーティングも、今日は今週末に備えた練習試合のオーダー決めやし…。まあ、俺はおそらく光とダブルスやとは思うけど、やっぱり一応は知っておきたいし、それに…ミーティングに1時間遅れた奴はレギュラーの皆ん前で10回連続一発ギャグや。…このごろ、ほんまに調子悪いからやりたない、と委員会が終わったあと、俺は走っていた。



そして、少女漫画の、ほれ、あるやん。
寝坊して、パン咥えながら走って、曲がり角曲がったら、




「ったー!」
「きゃ!」




男の子とぶつかって、きゅんっちゅーやつ。…まあ、俺がぶつかったんは女の子やったけど。ってええええ!そうやなくて!

女の子は書類を持っていた様で、書類は辺り一面に散らばっとる。その前に女の子に手差し出して、




「大丈夫か?ごめんな」
「あ、ありがとうございます」



そう俺の手を取って立ち上がった女の子。…めっちゃ好みやってん。
肩につくぐらいの髪はふわっと軽くカールしとって、ぱちっとしとる二重まぶた、健康そうなピンクが混じった感じの白い肌、身長は160あるかないか。
…それぐらい、一瞬で判断出来る程、好みで、めっちゃ可愛いかってん。




「ごめんな、俺が急いでたばかっりにな」
「あ、大丈夫です、こちらこそごめんなさい」




そう言って、眉を下げて笑った彼女は、ああもう可愛い。
やけど、はっとなって俺は散らばっとる書類を集めて、彼女に渡した。




「ほんまに、堪忍な」
「ふふ、謝ってばっかりや」
「え…」



そう口元に手を当てて笑って。うわあああああ、なにこの子、めっちゃ可愛い。可愛いすぎるやろ、なんでこんな可愛い子うちの学校におるん!?



「あ、私、急ぐから、堪忍です」
「あ、おん。気い、つけてな」



そう言えば、ふわりと微笑んだ彼女は、おおきにとだけ言って、向こうに歩いて行った。





勿論のこと、俺はしばらくそこから動けず、無論、あのままやったら間に合ったテニス部のミーティングも余裕で遅刻し、当然の様にスランプ陥ってる俺に大したギャグが出来る訳もなく。白石にも光にも、ユウジにもけなされ、散々やった。


でも、幸せでいっぱいやった。
あの子、めっちゃ可愛かった。俺、あの子に一目惚れしたかもしれへんなあ、と侑士が聞いたら飛びついてきそうなことを考えながら、ベットの上で携帯をいじっとた。そして、俺は気付いた。


「…名前、聞いとらんかった…!!」
120430

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