「さて、なまえちゃん、昨日はどうしてか教えてくれる?」


そう、朝、どんっと私の机を叩いたのはめいちゃん。
私がテニス部に乗り込んだ(と言っていいか分からないけど)のは一昨日。昨日は練習が朝練から休みで、今日は朝練から練習開始。
朝と言っても、もう朝練は終わっていて、忍足君も席に戻っていた。


「昨日は…景吾の家に行って、おば様に挨拶をしてたよ」
「おば様?」
「うん。景吾のお母様」


そう言うと、ふーん、と顎に手を当てためいちゃんは自分の席の椅子を、私と向かい合わせに座れる様に移動させてから、腰掛けた。


「ああ、だから昨日、会長焦って帰ったんだ」
「えっ跡部昨日速攻帰ったん?」
「そう。てか丸眼鏡も話聞いてたの」
「やってこの距離やし、聞こえるやん」


ねえ、みょうじさん。と笑いかけられて、そうね、と私は返した。
…忍足君、どうしてかな?昨日から、目が笑ってないというか…笑顔が、初日と違う。


「で?」
「え?」
「え?じゃないでしょ!会長と本当はどういう関係なの?」


めいちゃんはそう言った。忍足君もそれは気になるのか、椅子に座り直す。…どういう関係って…


「幼馴染、だけど?」
「お、幼馴染って…。もっと、こう、深いでしょ!あなたたち」
「深い?…まあ、向こうで日本人って少なかったから、小さい頃から、景吾とむねとは一緒だったわ」
「むねって?」
「樺地崇弘。2年生でテニス部の。忍足君知ってるでしょ?」
「まあな」


それで?と身を乗り出すめいちゃんに、私はどこまで話していいか戸惑った。
…景吾は、病気のことは黙っているつもりだし、それを私は支えるって言ったから、下手に言ってバレたりしたら、話にならない。


「…小さい頃から、ずっと一緒よ」
「…じゃあ、跡部がテニス始めた頃も?」



昨日一日は、見てても特に変化がなかった。昼休みに香月が誘おうと思った時には消えていたことと、放課後すぐに帰ったこと以外は何も。まあ、昼休みは跡部誘って昼飯食べてたってジロー言うてたし。すると、香月がみょうじさんに跡部とのことを聞いた。これは、チャンスやと思ってさりげなしに会話に参加してれば、


「…じゃあ、跡部がテニス始めた頃も?」


そう聞けば、嬉しそうに笑顔を浮かべて、そうよと、さっきより声色もよくなって。


「…どんなやったん?最初の頃」
「景吾は、最初すっごく弱かったわ。私がラリーで勝てるぐらいだった」
「え、なまえちゃんもやってたの?」
「景吾とむねが始めたから、ちょっとだけね。それでも、3人だから1人余っちゃうでしょ?いつの間にか、私だけテニスをやらなくなったの」
「…それで?」
「…景吾は努力家よ。ずっと負けてたけど、それも、いつの間にか皆に負けないぐらい、強くなった」
「大会はあんま出んかったんやろ?」
「大会は、出なかったんじゃなくて、」


え?出なかったんじゃなくて?そこで一度止めて、みょうじさんは机下でぎゅっとスカートを握り締めた。
すると、担任が入ってきてしまい、この話は終わりとなった。

120614
7season
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