「え?景吾のこと?」
「そう。跡部昔から、あんなんだったのか?」


女子達に囲まれて準備出来ないかも、と思ったけど、ちゃんと準備は出来て、放課後練に間に合った。今は、練習が終わり、景吾は榊のおじさまに呼ばれてむねと一緒に行っていて、私はレギュラーの部室で部誌を書いたり、スコアの整理をしていた。すると、レギュラーの皆さんは着替え終わったのか、いつも練習が終わった後は、景吾がもう一度レギュラーで解散の合図をするらしく、ソファなどに座っていた。その時に連絡事項とかをするらしい。すると、宍戸君がそう私に聞いてきた。ソファに座ったまま眠りそうだった芥川君も、飛び跳ねていた向日君も。レギュラー全員がこっちを見た。


「うーん…あんまり性格は変わらないよ」
「じゃあ、俺様の美技に酔いな!とか言ってたの?」
「…それ、私もマネージャーになってから聞いて、すごくびっくりしたんだよね。いつから言ってるの、あれ」


滝君が聞いてきたのにそう返せば、滝君をはじめとする全員がすごく驚いた様にして、それで、中1から言ってたことを教えてくれた。…なにがあったの一体。そうすると、おもむろに、芥川君がソファから飛び降りて、私の前に立った。え?なに?そう思って見上げれば、ん、と手が差し出される。


「…えーと…?」
「仲直りだCー。俺、おめえのこと、なんか勘違いしてたってこと、今日の昼休み、分かった」
「ひ、る休み…って!」
「あれ。あれから色々考えて、おめえのこと、認めてやんねーとなあって」


だから、仲直りだCーとにっこり笑って言った芥川君は私の右手を握ってもう一度にっこりと笑う。芥川君って面白い話し方するんだなあ、と思いつつ、昼休みのあれを見られていたことに少しそわそわする。…私あのあと、女子達泣かして追っ払っちゃったんだよね…そこまで見てたのかな、と芥川君、と声をかければ、


「ジローでいいCー。ああいう女子達返り討ちにして泣かしちゃうなんて、なまえちゃんやるCー。格好E」
「うわああああああ!」
「え!!」


私は芥川君、いやジロー君がそう言ったことで周りの皆が驚くのと同時に思わず叫んだ。びっくりした様に、いやするよね普通。びっくりしてジロー君はびくっと肩を揺らし、私は動揺して叫ぶと同時に立ち上がっていた。


「な、なんやねん、自分…」
「じ、ジロー君っ!お、女の子達泣かしちゃったことは、け、景吾には内緒の方向で頼みます!」
「え、うん、いいけどー」
「Really?Thank you!!
(本当?ありがとう!!)」
  

感激して目に少し涙を浮かべながらジロー君の両手をがしっと握れば、ぶふっ、と吹き出した様な声が聞こえた。えっ、とその声の方を向けば、向日君が肩を揺らして笑っていた。というか、皆くすくす笑ってる。え、なんなの、ひどい。


「あーなんか俺もお前のこと勘違いしたかも。お前面白い奴だな。跡部の幼馴染やってるだけあるわ」
「え、どういう意味なの?褒めてる?」
「褒めてる褒めてる」
「えっと…ありがとう?」


そう返せば、またぶふっと吹き出した向日君は俺も岳人でいいぜーって言ってくれて、どうやら私のことも名前で呼んでくれるらしい。それで、よろしくーと笑った私達に今まで黙っていた鳳君がすいません、と声をかけてから、女の子を泣かしたという話はどういうことかと聞いてきたので、


「…景吾には、内緒にしてくれる?」
「それは、なんで?」


滝君がそう聞いてきたので、私は、率直に恥ずかしいからと答えた。景吾を支えるために来たとか、景吾には恥ずかしいから聞かれたくない。日本に来たのはパパの仕事の関係だけど、景吾を支える気持ちもあったから間違いは言ってないのだけど、こんなこと景吾に知られたら、恥ずかしくてたまらない。そのことも含めて、今日の昼休みのことを正直に全部話せば、皆は黙ってしまった。そして、忍足君が一番最初に口を開いた。


「それで、みょうじさんは、どうするん?」
「なにが?」


すると、忍足君は言った。こんなことは今回だけじゃないだろう。泣かして帰した時点で、それの報復だけでも覚悟しなければならない。そして、嫌がらせ云々は少なからずあるだろう。それでも、マネージャーは続けるつもりか、と。それに私は迷わず頷く。


「私は、部長を支えるためにマネージャーになったの。夢を、約束を、果たすの、部長のね。だから、私の夢も一緒」


全国を、獲ること。
そう言えば、笑ったジロー君が抱きついてきて、みんなも笑ってくれた。


「これから、よろしくな、マネージャー」
「こちらこそ!」


宍戸君にそう言われて、私は笑顔で返した。マネージャーとして、絶対氷帝を全国に導く。景吾の夢が全国を獲ることならば、私の夢だって同じ。そうみんなで話していたら、景吾がむねを連れて帰ってきて、部室の雰囲気が違うことに気付いたのか、驚いた表情を見せた後、よかったなとでも言う風に私の頭の上に手を載せ、ぽんぽんと軽くなでてくれた。そして、


「監督が用意してくれたらしいんだ」
「すっげー!レギュラージャージと似たデザインだCー」


そう言って景吾が私に渡したのは、氷帝テニス部のジャージ。ジロー君と岳人君が一緒に覗き込んでいて、レギュラージャージと似ていると言ってる。確かに。レギュラージャージにある7本線がない。襟は同じ黒だけど白で刺繍が入れてある。私の名前だ。要するにこれは、おじさまが用意してくれた、マネージャー専用のジャージだと考えていいんだろうか。これを着て、テニス部の一員として、活動していいと、言う意味なんだろう。そう思ったら、すごく嬉しくて。そんな私に景吾も本当に嬉しそうに笑いかけてくれるから、なんだか一層嬉しくなった。


121010
日吉は書き忘れじゃなくて、この時はまだ準レギュなので居ないだけです
20season
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