お昼休み。今日は一緒にお昼を食べれる、と聞いてきためいちゃんに私は頷いた。景吾にはお弁当を渡してあるし、毎日お昼を一緒にする約束はしてない。ただめいちゃんに、今日は昨日貰った資料を見たいということを伝えれば、それを見ながらでいいから、とのこと。


「…なまえちゃん、部活ってテニス部だったんだね」
「うん。マネージャーに」


そう言えば、テニス嫌いじゃなかったの、と不思議そうに聞かれた。ああ、やっぱりそう思われちゃっていたのか。そう思いつつ、私は違うよと否定をした。すると、そっか、とめいちゃんは頷いて、そして。


「会長さ、何か隠し事してるよね?それも、樺地君となまえちゃんだけは知ってるぽい感じの」
「…どうして?景吾が、隠し事?」


めいちゃんはそれに頷いた。だって会長、すごい自信満々でプライド高くて、でもリーダーシップがあって、人を魅了する力がある。反面、何かに弱っている感じがある。それは、生徒会執行部メンバー全員が感じていて、テニス部レギュラーも同じ。でも、あの会長にもプライバシーがあるし、相談されるまではって皆思ってた。会長が秘密を共有してるの、樺地君だけみたいだから。だけど。そう言ってからめいちゃんは私を真っ直ぐ見た。


「なまえちゃんが来て、秘密を共有する人が増えた。でも、それで会長の負担が減った様に見えるから執行部は何も言わないよ。むしろ、なまえちゃんを応援する」

だから、なまえちゃんも溜め込まないで、ちゃんと相談してね。

そう笑って言ってくれためいちゃんに、ありがとう、とお礼を言った。めいちゃんはそれにどういたしまして、と目を細めて笑ってくれた。



「みょうじ、か」
「よう分からん様になってきたなあ」


今日は学食の入口で会ったことにより、俺と長太郎と、忍足、岳人と一緒だ。そして自然に話は、テニス部マネージャーのことになる。
俺が名前を呟いたことで、忍足もそう言いながらがしがしと後頭部をかいた。岳人は仏頂面をしてる。


「俺は、そんな悪い人には感じませんでしたよ」
「そりゃ、まあ、あの手際の良さ見ればなあ」
「あいつ、テニス嫌いだったんじゃねぇのか?」


クソクソ、と口癖を言った岳人。どうでもいいかもしれねえけど、クソクソって口癖はどうかと思う。以前それをジローに言ったら、りょーの口癖も変だC〜と寝ぼけながら言われた。お前の喋り方だって変だ。すると、忍足がそれや、と岳人を見た。


「跡部が言うには、イギリスに居た頃は、跡部達のサポートやってたらしいやん」
「確かそう言ってたな」
「それに、小さい頃は一緒にテニスやってた、って言うとったわ、みょうじが」
「え、じゃあ、なんででしょう…?」
「つまり、テニス嫌いじゃねえってこと?」


岳人がそう聞けば、分からんと忍足は答える。そうだ。昔は関わっていたとしても、跡部が日本に来てからの2年間。みょうじがテニスを嫌いになる可能性はある。そういや、


「忍足、みょうじが来た時、あいつら英語喋ってただろ?分かったか?」
「…発音とかイギリス英語やったけど、たぶん、『久しぶり』ってみょうじが言うて、『会いたかった』とも。それで跡部に抱きついて、『俺も』と跡部が返して。あと…」
「…あと?」
「『こいつらは、何も知らないんだ』って跡部が言うてた」


なんだそれ。
…跡部が、何か隠し事をしてるってことか?そりゃ、俺達は実力だけで集まってるレギュラーで、でも仲間意識はあるし、跡部だってあいつなりに俺達に信頼を見せてくれてる。そんな俺達に、隠し事?…家の事情か?跡部家の?でも。


「…でも、俺達は、跡部とみょうじが何か言ってくるまで、黙ってようぜ」
「亮…?」
「考えてみろよ、岳人。跡部はあんな奴だけど、俺達を仲間だと思ってるはずだ。そんな跡部が意味もなく隠し事するか?」
「ないな。跡部は、そう言うとこしっかりしとるし」
「だから、俺達は、みょうじがマネージャーをしっかりやる内は、マネージャーとして見てやるべきだ」
「そうですね。それに、みょうじさんがくれた薬すごい効くんですよ」


それでも、俺はあいつが嫌いだ。
そう言った岳人に、しょうがねえ奴だな、と俺達は笑った。


120916
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