翌日。
朝練が7時からと昨日景吾に聞いたので、とりあえず5時半に起きた。レギュラー・準レギュラーは強制で、他の部員の人たちは自由らしいけど、200人前後は朝練に参加してるらしい。結局殆どってことだ。
6時頃には部室に着いていて、昨日景吾から貰った合鍵(と言ってもカードキーだ)で開けた。マネージャーは他の部活のマネージャーと一緒の更衣室があるそうで、そこの鍵も貰った。ジャージに着替えて、と中に入れば、あれ、と聞き慣れない声が聞こえた。その声の方を見れば、黒髪のショートで身長は高めの美人さんが居た。


「あ、おはようございます。えっと…」
「おはよー。えーっと、あ!知ってる!みょうじさんでしょ!男テニのマネージャーになった」


元気そうに笑って言った美人さんは、比野千尋と言うそうだ。サッカー部のマネージャーらしい。元気で明るい子で、すぐ仲良くなった。なんか、ちーかちーちゃんって呼んでって言われたのでちーちゃんって呼ぶことにした。笑うと余計美人さんだ。


「男テニのマネとか大変だよねえ。200人居るんでしょ?」
「うん。215人だって」
「うわー。信じられない。うちんとこなんて37人なのに、もー大変だもん。私だったら無理だわ」


そうやって、けたけたと笑ったちーちゃんは、サバサバ系の美人さんだ。スレンダーな体型が羨ましい。お互いマネ同士頑張ろうね!仲良くしよ!とちーちゃんは言ってくれて、私はそれにうん!と返した。それからお互い準備があるから、またねと言って別れた。
さて、まずはドリンク用意しよう。その前に予備のタオル一回洗濯しちゃおう。洗濯をしつつ、隣でドリンクを作る。今は時間かかるけど、慣れてしまえば時間短縮出来そう。そう思って、ドリンクを籠に入れて運んでると、それがひょい、と誰かに持たれた。


「え?あ、むね!おはよう」
「おは、よう。ございます」


どうやら、持ってくれたのはむねの様で。お礼を言えば、そうやって薄く笑って挨拶をしてくれたので、私も笑顔になる。むねが籠を二つ持ってくれて、私は急いですぐに持っていける様に用意しておいたもう一つの籠を取りに行き、待っていてくれたむねにもう一度お礼を言ってからテニスコートに向かった。テニスコートに行けば、景吾がジャージ姿で立っていた。


「景吾!おはよう」
「ん?ああ、なまえじゃねえか、その肩のよこせよ」
「あ、ありがとう」


そう言えば景吾も薄く笑ってくれて、私はむねと一緒にドリンクの入った籠をベンチの上に並べた。左手につけた腕時計を見たら、6時20分。景吾がさっき持ってくれたのは、テニスコートに張るネットで。景吾はコートの中へと入っていっているから、それを追いかけて。


「私の仕事だから、いいのに」
「俺がやりたいからやってるんだ。それに、1人じゃな」


ほら、反対側持て、と渡されて、私は片方を受け取り、そのまま嬉しくて少し笑ってから、ネットを張った。

全部のネットを張り終わったら、6時40分になっていて。景吾に聞けば、いつも6時半前には着いているらしく、自主練をやったりして時間を潰しているそうだ。私は、あとは今洗濯を回してるのが終わらないと仕事が無いので、ベンチに座っている景吾の隣に座って、私はそうだ!と手を打った。


「テニス部の部員を覚えたいの。どうせ景吾は覚えてるんでしょ?」
「当たり前だ。崇弘も覚えてるだろ?」


自分のラケットケースからラケットを取り出していたむねは、yesと頷いた。それならなおさら覚えなきゃ。そう言えば、後で資料をやると言ってくれた。そうこなくっちゃ。


「そういえば、スコアとか、怪我の治療は大丈夫だよな?」


ふとそう聞いてきた景吾に、私はあのねー、と景吾を見た。その意味に気付いたというか、最初から分かりきった質問に景吾はくつくつと笑ってみせる。むねも笑みを浮かべていて。
イギリスに居た頃。プライマリースクール、つまりは小学校だ。小学校低学年ぐらいにはもうテニスをやらなくなっていた私はそれでも、景吾とむねがテニスをやる時は殆ど一緒だった。だから、サポートは私がしていた。景吾は勿論だけど、むねも含めて二人の軽い体調管理も、ドリンクも、勿論スコアの管理も。たまに怪我をする二人の怪我の治療も。支えたくて。もう、好きだって気付いてたから。そして、小さいながらに、景吾のことを理解していたから。少しでも、いい思い出を、好きなことを、と思って。必死にマネージャー業を覚えた。それでも、完璧に出来るまでは時間がかかったけど。そして、景吾とむねと別れてから、再会するまで。もっと高度なサポートがしたくて。テニスをやめたと思っていたから、その間必死に勉強したのは、どちらかと言うと、治療とか体調管理のための知識だけど。


「それも、お前がマネージャーやってくれるって言った時嬉しかった一つの理由なんだよな」
「I'm glad that I drink to your drink.
(僕はなまえさんのドリンクを飲めるのが嬉しいです)」
「ああ、俺もだ」
「…褒めたって何も出ないよ」


そう言ってから、私は腕時計を見た。45分。もうすぐ部員さんたちも来るんじゃないかな、と思っていれば、ちらほらと部員さんたちが来た。皆、景吾に挨拶していく。すると、レギュラーの方が来た。


「おはよーあとべー」
「はよ」
「はよー」
「ああ。…ジロー、起きろ」


私は咄嗟に座っていたベンチから立って、むねの隣、つまりは、ベンチに座る景吾の後ろの立った。来たレギュラーの方は、半分眠っている人と、その人を引きずってて髪を結ってる人、半分眠っている人の分のラケットケースも持っている赤髪の人。

そして、3人とも、私を睨む様な視線をしていた。


120812
書いてませんが、ドリンクはちゃんと冷やしてあります
14season
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