俺が、自分の身体の為に薬を飲みだしたのは、物心つく前で、それは当たり前だと思っていた。自分の寿命を知らされた時は、実感が沸かず、そして、暫くしてから自覚した。憤り、というか、なぜ俺が、とは思った。でも、仕方ないのだ。そういう身体に生まれてしまったのだから。人より寿命が短いだけで、あとは殆ど何も変わらない。たまに身体が言うことを聞かなくなること以外は。

小さい頃から、なまえと崇弘と過ごしてきた。母様が身体が弱く、俺は一人っ子だったから、いつも幼馴染み2人と過ごしていた。ちなみに、俺の病気、も遺伝みたいなもので。母様の家系は呪いでも受けた様に身体が皆弱い。
無条件に慕ってくれる崇弘は弟の様で可愛くて仕方なかったし、俺の隣でいつも笑っているなまえも可愛くて仕方なかった。ずっと、好きだった。なまえのことが、小さい頃からずっと、恋愛対象としてずっと。大好きだった。今も、好きだ。

それなのに、日本に来てからなまえに連絡をしなかったのは、寿命が縮んだことがあった。短くなった寿命。だったら、なまえとやめると約束したテニスも、諦めずにギリギリまでやりたい。あと数年の命なら。他の奴らが俺の4倍も生きるなら、俺は残された数年に全てを詰めて。充実した、数年を過ごしたかった。

勿論、その数年だけでも、隣になまえが居てくれたなら、どれほど俺は幸せな人生を送れるだろうか。だが、連絡はしなかった。なまえは、優しい奴だ。俺が今の現状を連絡すれば、日本に駆けつけてくれるだろう。傍に居て欲しいと言えば、居てくれるだろう。俺は残りの数年を幸せに過ごせる。でも。なまえに無理を強いたくはなかった。なまえに、数年経てば消えてしまう奴なんかの思い出を残しても仕方ないとも思った。だが、同時にあいつの中に俺が色濃く残って、誰かと何をしようでも俺が思い出されればいいとも思った。


だから、連絡しなかった。呼ばなかった。


だが、なまえは日本に来た。両親の都合で。暫くは日本で過ごすらしい。そして、テニスをしている俺と、再会をした。泣きそうな顔で会いたかったと言われた時は、抑えていた気持ちが一気に溢れ出た様な錯覚でも起こした様に、一気になまえへの愛しさが増した。


事情を話して俺が願えば、案の定なまえは傍に居てくれると言ってくれた。すごく、嬉しかった。


そして、俺はやはり我儘だと痛感した。



「おーいっ!あとべー!試合やろー!!」
「ジロー…お前ってやつは…」


珍しく目が覚めているジローは、アップもそこそこに俺に試合をやろうと言いながら、もうすでにコートに入っている。全く調子のいい奴だ、と笑いながら俺はベンチに置いていたラケットを持ち、コートへと入った。行くぞ、とジローに言えば、にこにこと楽しそうに笑っていた。

120803
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テーマ「人外ファンタジー」
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