彼の腕の中で

「え?忍足、帰るの?」
「え、おん。そりゃあ、俺かて年末は帰るよ?」



そう忍足は当たり前やんと笑顔で返してきた。
今日は、忍足の家に遊びに来ていた。まあ、…その、忍足の彼女であるから、初詣とか一緒に行ってくれるのかなとか考えていた。忍足、こっちで一人暮らししてる訳だし。だからこうして頻繁に家に遊びに来ることが出来ているわけなんだけど。

…そっかあ。流石の忍足も年末は帰っちゃうのか。
そう思いつつも、クッションに顔を埋めれば、隣に座る忍足が髪を梳くように、私の頭を撫でる。優しい手つきで、すごく安心する。



「なんや、寂しいん?」



少し嬉しそうな声色で言うから、クッションから顔を上げてキッと睨んでやる。すると、おおこわ、とか楽しそうに言ってから、私の頬を撫でつつ言った。



「自分、あんま言わへんやろ?寂しいとかそういうの」
「…言う機会なんてないじゃん」
「そうか?」



そう言って意地悪そうに微笑んだ忍足は私の後ろの方へと手を回し、ぐっと体を近づける。忍足の顔が近くに見えて、なんだか照れくさくなって顔をそらせば、今度はくすくすと忍足は笑った。なによ、と思って忍足を見れば、そのまま触れるだけのキスをされる。



「ああ、可愛ええ」
「…なにが」
「なまえが」
「なんで」
「いつも嫉妬とかしとるのに必死で隠すし、今もなんだかんだ言いつつ、真っ赤やから」



そしてまたああ可愛ええと耳元で囁く忍足にびくつきながらもうるさいと小さく言えば、また小さく笑われる。忍足は今度は眼鏡を外して、そのまま真っ直ぐに私を見た。



「今年は一緒に居れんけど、来年からは居るさかい。そんな拗ねんで?」
「…別に拗ねてないし」



そう小さなこどもに言い聞かせるように言うから、なんだか悔しくなって言い返す。しかも、私の思ってることしっかり把握してるし。すると、また笑って可愛ええとその特徴のある心地よい低音で言うから、ひどく安心してしまう。そっと彼のシャツを握れば、一瞬驚いた様に目を見開いたものも、またくしゃりと笑ってくれた。…その笑顔が、外で見せるような当たり障りのない…正直言えば胡散臭い笑顔ではなくて、なんとなく子供っぽい笑顔だったから、少し嬉しくなって、私はそのまま彼に寄りかかった。




「なまえ、」
「…なに?」
「そろそろ名前で呼ばへん?」
「…無理。…恥ずかしいから無理」



そう答えれば、分かっていた様に忍足は笑って、じゃあもう少し我慢しますかと言って私のおでこにキスを落とした。



111227
PIGU様へ捧げます。6万打リクとして書かせていただきました!詳しいご要望がなかったので、とりあえず甘を目指したのですが…見事に玉砕。こんなので申し訳ありません。ご不満があればまたご連絡ください。

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