ふたりのそんな甘い時間
「げーんー」
「ん?なんだ、なまえ」
「手ー繋ごう?」
そう弦に言えば、かっと頬に赤がさした。同時にばっ、と言った。馬鹿のば、かな?
「ななな何を言っている!」
「えー、いいじゃん」
「手など繋げれるかっ」
真っ赤になりながら言う弦。うわ、可愛い。いつもは格好いいのに、こういう時は可愛いんだから。…全く、反則だよね。私も厄介なハンサムさんを好きになっちゃったなあ。
「いいじゃない、繋ぎたいの!」
「いい悪いの問題ではないのだ!」
「何を今更照れてるの?!キスもしたじゃない!」
「ば、それとこれとは話が違うのだ!」
また、ば!馬鹿じゃないよ!げんのばか!どういうこと!どういうことなの?
恥ずかしいんじゃないの?え、じゃあどういうことなの!
「…今日は家庭科の時間に傷を負ってな。指が絆創膏だらけなのだ」
と掌、私が繋ごうとした弦の左手を見せてくれた。そこには、中指と薬指に何枚か絆創膏が巻かれていた。
「…どうしたの、弦が珍しい」
決して上手な訳ではないけど、弦は料理も慎重にやる派の人で、今まで切ったことなんて一度もない。
「丸井がな、飛んできたんだ」
「…ブンて違うクラスじゃない」
「…ああ。多分匂いにつられてきたんだろう。今回は男子が珍しく家庭科をやることになったらからと張り切った先生がカップケーキを作ると言い出されたからな」
「へえ、」
、てカップケーキ!カップケーキ!私も欲しい!いや、カップケーキが欲しい訳じゃないけど、弦が作ったの欲しい!…あ、弦が私の作ったお菓子をいつも食べちゃうのはこういう気持ちなのかな?
「…なんだその物欲しそうな目は」
「弦の作ったカップケーキ食べたいなあ」
「ああ、それなら丸井が食った」
「嘘!」
「嘘を言ってどうする」
いやいや、そうだけれども!
ちくしょうブンの豚やろーめが!弦のじゃなくてヒロの食べろバーカ!
「ちなみに柳生も仁王に食べられていたな」
マサ、お前もか…!ヒロ彼女居るのに可哀相てかマサお前もブンも彼女居んじゃんか!
「…なまえ?どうしたのだ?」
「あ、ううん!別に大したことじゃないよ!」
「そうか。ならば、」
そう言って出されたのは、数枚のクッキー。小さなラッピング用の袋に入っている。
「なにこれ?」
「クッキーだ」
「いやいやそうじゃなくてね弦、」
「それも一緒に作ったのだ。なまえに食べさせたくてな、死守した」
そう言った弦の頬が赤いのは夕日のせいじゃないよね!ふふ!
嬉しくなった私は、きゅ、と弦の左手の手首を掴んだ。
101218
111210 転載
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