TH | ナノ

13th key

昼休み。去って行った女子を見送って、やれやれと息をついた。誰じゃ、あいつを紳士とか言い出したんの。ここ暫くあいつの呼び出し断っとんの俺じゃし。このままだと俺が紳士ぜよ。そう思って伸びをすれば、急に携帯が鳴り、屋上に居たため周りに誰も居ないことをもう一度確認してから、画面に表示されている人の名前を呼んだ。


「…は?」





「…で?」


告げられたのは速攻図書室とだけで、すぐに切られた。学校でなまえが電話をかけてくるのは珍しいとは思ったけれど。思ったからこそ、人が居ないところは走ったんじゃけどね。いやはや。この展開は詐欺師も予想しとらんかったわ。


「ごめん!マサ!」


手を合わせて真っ青な顔でそう言ってくるなまえに、いいんじゃよと頭を撫でてやれば、本当に?と上目使いの表情を浮かべてくるので、笑みを浮かべた。それから、


「…本当なんですね、あなた方が幼馴染みと言うのは」
「まあの。隠しとる理由は分かるじゃろ?柳生」


そう笑みを浮かべて問えば、ええ、と少し戸惑いながらも頷きつつ柳生は眼鏡を押し上げた。図書室に着くなり、なまえに奥の棚の方へとつれてかれ、そこには『俺』が居た。つまり、入れ替わっとった柳生が居たのだ。どういうことじゃと視線を送れば、詳細を告げるなまえ。なるほどのぅと頷きつつ、


「と言うことでー、柳生?」
「ええ、分かっています。仁王君とみょうじさんが幼馴染みと言うことは黙っています」
「ありがとう、柳生君!」


頷いた柳生にほっとした表情を見せておく。そして、では入れ替わりはこれで、と変装をといた柳生は去っていく。それから暫くしてから、隣でため息をつき、なまえが座り込む。


「で?なんで入れ替わってたのよ…」
「柳生が呼び出しされたから代わりに行ってくれって。4限サボったの真田に言われたくないじゃろーって」
「…とんだ似非紳士だね」


そう呟いたなまえに、で?と話を促す。THのことは話さず、俺は小学校が途中から一緒であり家が近く、両親が仲良し。つまり、典型的な『幼馴染み』だと説明したらしい。勿論のこと、TH関連は何も話していない。中1までは隠していなかったが、中2で俺がレギュラーになってから隠す様にしたとの設定らしい。これは、蓮にも言っておかんとなあ。口裏合わせじゃ。この場合、蓮も知らないって設定じゃろうけど。ちゅーか、柳生なら大丈夫だとは思うが、ついうっかり、バラしてもうたらめんどいこと極まりない。赤也やブンちゃんじゃなく、柳生である分、いくらかは気分としては楽じゃが。


「てか、私がマサと柳生君の入れ替わり、分かんなかったら危なかったなあ」
「結構分かるもんナリ。蓮も分かるしの。それに、お前達ならでこその見破り方が色々あったはずぜよ」
「ああ、うん。視線とか左腕とかね」


マサ、他人に左腕触られるの嫌いだもんねーと笑顔で告げたなまえは、そこのところは柳生君完璧と言ってみせる。そう、他人はの。そこら辺の女子に触らせるほど大事にしとらん訳がない。利き腕じゃぞ。まあ、なまえや蓮、あとは師匠とかエリさん、跡部や謙也、ぐらいか。家族以外で言えば。まあ、うちのテニス部も勘定に入れてもええ。
――それから、なまえはじゃー本題と言って、真剣な顔になる。TH関連の話じゃろうなあ、と思いながら、まだかけていた度なしの柳生の眼鏡を取ってなまえに向き合う。


「蓮が、masterが動いてるっぽい。神の子に対して」
「……どういうことなり。詳しく話しんしゃい」


121213
仁王語は書いててすごく楽しいけど、すごく難しい