TH | ナノ

third code

蓮とマサが部活を終えて事務所についた時には昼ごはんの準備は終わっていて私は携帯に来たメールの選別、景吾君はドイツ語の本を読んでいて(景吾君の影響でドイツ語少しは読めるようになって最近少し嬉しいんだよね)、スープを温め、サラダを出して、そしてオムライスを作ってから4人ので、私はさっき景吾君から聞いたことを話した。


「…滝、萩之介?」


オムライスを一口食べてから、景吾君が言った依頼人の名前を聞き返した。…なんかちょっと古い感じ、と言うか歌舞伎かなんかの方ですかね…そう思って蓮とマサを見ればマサはそのまま蓮に視線をやった。蓮はバックの中からノートを一冊取り出し、どこかのページを開くと、


「…滝萩之介と言えば、氷帝のレギュラーだな。約3年前、つまり俺達が中3の時に宍戸に負け、レギュラー落ちをしてから準レギュラーでレギュラーに一番近い位置に居たと言っても過言ではない。今はレギュラーの一人だな。…最も近々下剋上が起こり、レギュラーでなくなる可能性は大だが?」


相変わらず、ストーカー並みの情報量。…まあ、蓮が自分の得た情報をノートに書き込むのはある意味気遣いなのだ。PCなんかに入れておいたら、まあTH仕様だから滅多にクラックなんてされないけれど、まさかの時。全て情報は流れ出る。そんなことど無いようにの、ノート。ノートは自分が管理さえしておけば、盗まれることなど無いに等しいし。


「…相変わらずだな。…ああ、その滝だ」
「てことは、チームメイト兼お友達?」
「ああ、滝とは他の何人か合わせての初等部からの付き合いだ」


頷いた景吾君はスープを一口飲み満足そうに口に弧を描く。…謙也のが美味しいだろうし、お家でさんざん美味しいの食べてるから、舌肥えてるだろうに、こんなコンソメの素ぶちこんでオニオンと人参入れてパセリふっただけのスープに喜んでもらえたとか凄く嬉しい。すると、マサが口を開いた。


「で、内容は?」
「…ああ、それがな」


景吾君が私達に依頼する様に言わなければ、未成年の一般人がTHに頼もうとはあまり思わないだろう。…と、言うことは、景吾君が私達に頼んだ方がいいと判断した、イコール、規模が大きいとか、景吾君にも直せないレベル、ということ。
すると景吾君は、かちゃりとスプーンを置いて、胸ポケットから一枚の折り畳んだA4サイズの紙をテーブルの真ん中に置いた。そして、私達三人は息を飲むこととなる。


「…間違いなく、このロゴはTTじゃな」


いち早くそう言ったのはマサだった。それに私も蓮もすぐに頷く。やっぱりか、と景吾君は予想していたかの様にそう言ってからため息をついた。

TT。
正式名は、恐らくTeam・trick。恐らく、と言うのはこのチームが中々、私達と同じ…いやそれ以上に謎に包まれたチームであるから。国籍も、何人なのかも、性別も。全くもって分かっていない。ただ、一文字違う私達THが3人(ただ私達も3人だということ以外はコードネームしか知られていない)なので、TTも同じ様に3人なのではという噂だ。ただ、1人ではないことは確かである。作業の仕方、スピード、まあその他諸々から考えて、やはり3人が妥当だな。


このTTというチーム。
結構な厄介、というか正直言えば気に食わない。私達はクラックをしないが、このチーム、ハッキングというよりはクラック専門のチームなのだ。依頼とかそう言うのはやっていないみたいで、恐らくTT自体が赴くままにクラックしていると思われる。目的が全く分からないし、クラックを受ける会社なども、不正をやっている所から、普通の企業、個人のコンピューターなどまちまちである。かく言う、景吾君の会社であるA・Kや謙也が管理する忍足病院のメインコンピューターなどは、凄腕の景吾君と謙也のセキュリティでさえ破られたのだ。そして、未成年で被害を受けている所も多い。


「…どこぞの漫画の怪盗を真似ているのか知らないが、このふざけたロゴは間違いないな」
「…ムカつく」


蓮がその紙を持って再度確認する様に見ながら言った。TTは某漫画のあの気障な怪盗と同じく、ロゴを持ち、毎回そのロゴは少しずつ変わる。だけど今までのロゴを私達は全て見てきたから、そのロゴの持ち主がTTの模倣犯なのかTTなのかぐらいは見抜ける。

その紙に印刷されたふざけた英文が混じった文の右下。TTが丸みを帯びて終わりが外側に跳ねている。…見方によっては髭の生えた意地悪そうなオジサンが笑っている様に見える。ていうか私にはそう見える。


そう。お察しの通り、私は勿論、蓮もマサも、TTのことは大嫌いである。
そして、私達THとTTが比べられるなんて、吐き気を催す、私は。…まあ、蓮もマサも同じ様な顔をしているから、内心としては似た所だろう。


「景吾君、この滝さんの個人コンピューター?それとも、」


何が、なんてなくてよい。TTの被害にあったのが、滝さんのどのコンピューターなのか。するとすぐに景吾君は、滝の家の、会社のだと教えてくれた。…滝さんちって何やってんだろう…。


「…確か、滝んちは…母親がデザイナーでそのブランドの社長が父親じゃったな」
「ああ。そのメッセージが表示されたのは、滝のパソコンだ。だが、」


どうやら、滝さんの個人用パソコンに今までの会社のデータを参考として貰い、入れておいたらしく。世間一般のセキュリティは万全だったらしい。…まあ、そのセキュリティを壊すのが私達みたいな奴のお得意技だ。



「…とりあえず、滝の家に直しに行かないといけないな。その後の防犯対策としてはデータはやれるが」
「…いつも通りパソコンをこっちに持ってくるとかしとったら何なるか分からんしのう、TTの仕業じゃと」


それなら、誰が会いに行くか。というか、その前にこのメッセージ―景吾君が見せてくれたA4用紙に印刷されていたものだ。滝さんのパソコンは常時電源が入っており、デスクトップにこのメッセージが出ているらしい―の暗号を解かなければならないね。

右下のTTのロゴがムカつく。


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跡部は幼稚園時代がイギリス、小学校は氷帝と捏造。ジロー、宍戸、跡部と幼馴染み捏造。3年レギュラーは忍足以外全員氷帝初等部出身捏造。