TH | ナノ

seventh key


「いきなりで悪かったね。部活は大丈夫かい?」
「うん。今日はちょうど休みだったんだ」


そう言って頷いたのは、言わずもがな、不二周助だ。
今日、日曜日、俺は研修旅行前に依頼されていた、不二裕太のパソコンについてのことを不二に話しに来ていた。俺と真田が出した結論は『不明、かつ今後の調査による』。つまりは、不二裕太のパソコンを実際に見てみないことには分からない、という訳だ。真田はTHの最近の動向を探ってもらっていて、俺は青春台へと、不二に会いに来ている。喫茶店で待ち合わせをし、俺達は各々紅茶を頼み、まずは事情説明だ。


「つまり、裕太のパソコンを見たいってことだね?」
「そう。大丈夫そうかい?」
「たぶん。裕太は今日は帰ってくる予定じゃないから大丈夫だと思うよ」


そう言った後、不二は真剣そうな顔をして俺に聞く。何か危ないことをしているんじゃないか、と。その可能性は五分五分と言った所だ。いや、正確に言うのであれば、可能性だけならば『危ない』方へと傾いている。ただ、それを率直に兄である不二に伝える程、迂闊ではない。蓮二がこちらの世界に繋がっていることが分かった今。一般人である不二に簡単に現状を話していい訳がない。これ以上周囲でこちらの世界の者が増えても困る。


「それにしても、幸村がパソコンとかそういうのに長けてるだなんてびっくりしたな」
「俺は真田と手塚が繋がっていたことの方が驚いたな」


そう苦笑い気味に言えば、ああ、と分かった様に不二も笑った。それには僕もすごく驚いたよ。と不二は言った。あの堅物の手塚がこっちの関係に詳しいのも驚きだし、真田もいつそれを知って、いつから協力してもらっていたんだろう。不思議だ。すると、そう言えば、と不二は思い出し笑いをして、


「越前も結構出来るみたいなんだよ、パソコン」
「坊やが…?でも、なんでいきなり、」
「ほら、そこに居るから思い出してね」


そう言って不二が指差した先には私服姿で、珍しく帽子を被っていない越前が居た。こちらに気付いている様で軽く手を上げた。それに不二が手を上げて返すと俺達が居る喫茶店に向かって歩き出した。というか、坊やの私服なんて初めて見たかもしれない。テニスをしている時にしか坊やを見たことがないから、帽子を被っていないのに珍しいと感じるのだろうか。すると店に入ってきた坊やがちーっすと声をかけてくる。


「どうしたんすか?立海の幸村サンがなんでこっちに?」
「僕と約束があってね。越前こそ、今日は部活は?部長だろう、君は」
「今日は休みっすよ。俺、昔から遅刻はしても部活休んだことないんすけど」


拗ねた様にそう言った越前にそうだねと笑った不二。それにしても、この坊やは俺達と負けず劣らずのテニス馬鹿で、オフの日も元プロの父親と飽きもせずに打ち合ってると蓮二が以前言っていたのだが、今日は何か用事があるのだろうか。そう考えていれば、


「今日はどうしたんだい、越前は」
「俺も約束っす。遠い所から来る人と待ち合わせ。これから駅まで迎えに行くところ」
「それは、よかったのかい?」


そう俺が聞けば、坊やはいいんすよと目を細めて笑った。それから、坊やは俺達のところからすぐに駅に向かって行った。いいとか言っておきながら、結局相手から電話がかかってきた。彼女かなと俺が呟けば不二がそれを否定した。


「うちの顧問、覚えてるかな?」
「うん。竜崎先生だよね?」
「そう。越前、竜崎先生のお孫さんといい感じだからそれはないよ」


じゃあ、一体誰、と言おうとして、坊やのプライベートを知っても仕方ないと思い、話を元に戻す。そして、このまま、不二の家に行くことになった。



121014
相変わらず夢主が出ないシーンあって、すいません