TH | ナノ

sixth key

蓮二が、こちらの世界の、人物だった。

俺達は蓮二に話があると言われ、そして、忠告を受け。蓮二がこちらの世界の人物であることを知った。蓮二は何をしているのだろうか?蓮二自体は何も気付いていない様だった、まだ。そうだ、まだ、である。あいつは俺達に気をつけろと言いたげに忠告をした。要するに、あいつは、忠告をする程のものに今まで出会ってきて、そして今現在こちらの世界でやっていけてる奴、ということになる。

一体、何者なんだろうか。




「幸村君?」




そう考えていた時。名前(正しくは名字だけれど)を呼ばれ、はっと隣を見た。そこにはみょうじが居て、消しゴム、あ、俺のだ。俺の消しゴムを持っていて、それを俺に差し出した形で止まっていた。首を小さく傾げていて。…ていうか、よくよく見ると、あ、いや、よくよく見なくても、みょうじって普通に可愛いんだよね。…この子に他の面があって。それをこの子の幼馴染は見れてるってことで。ああ、なんか羨ましいな。



「はい、これ。落としてたよ。…ぼーってしてたけど、何かあったの?」
「あ、いや、何もないよ。ちょっと考え事してただけ」
「そう?」



そして、また首を傾げたみょうじのところに、有明、三浦、清水が来た。…有明だけじゃなくて三浦と清水とも仲良いのか。この二人は、テニス部ファンクラブの幹部で、三浦が仁王のファンクラブの、清水が真田のファンクラブ会長だからなあ。正直、あんまりいい印象がない。すると、結構真剣…っていうか、必死な三浦がみょうじに詰め寄った。



「ちょっと!なまえ!教えてよ!」
「はい?」
「光莉、朝練で仁王君達見てたんだけど、また分からなかったんだってさ。なまえは分かったでしょ?コツ教えて欲しいんだってさ」
「こ、コツって言ったって…」



朝練?仁王達?コツ?
一体、何の話をしているんだろう。そう思ってみていれば、清水がふふふ、と笑って、俺に言った。



「なまえちゃん、昨日の放課後練で仁王君と柳生君の入れ替わり見破ったんだよー。すごいよねー」
「え?仁王と柳生の入れ替わりを?」
「うん。光莉ちゃんは、長い事ファンやってるけど分からないから悔しいんだってー」
「だ、だから!なんとなく、違和感あっただけで!見破った訳じゃなくてね!」
「違和感感じるだけですごいよ!なまえ、碌に仁王君と柳生君見たことないんでしょ!」
「う、うん」
「なのに、分かるってどういうこと!」



三浦はそう言って、みょうじは苦笑いをしたままだ。
仁王達の、入れ替わりを、見破った、ね。…もしかしたら、三浦達に言ってないだけで
みょうじ自信、仁王か柳生、どちらかと関係があるのかもしれないな。そう思っていれば、まあまあ、と有明が宥めに入る。



「ほら、なまえは仁王と同じクラスになったことあるし」
「愛だってそうなのに、分からなかったでしょ!」
「うん…。まあ、そうだけど」
「ちょ、ちょっと!愛!もう少し頑張ってよ!」
「ごめん、無理」



わいわいと騒いでいれば、清水は騒ぎを聞いて寄って来た丸井にお菓子をあげてた。ああ、清水は家庭部の部長だったね。…それにしても、ずっと見てきた三浦に分からなくて、みょうじには分かった、ね。








「あ、今週の日曜日、仕事休みじゃーん。久しぶりにTHに会おうかな?Pに怒られるのも嫌だしなあ」



東京某所の喫茶店で。そうパソコンを触りながら呟いた人物が居た。その人は自分の携帯を開き、メール画面を立ち上げる。暫く操作したあと、うん、と頷きながら携帯を閉じて、またパソコンへと向き直った。

121007