TH | ナノ

first key

俺は、許さない。
  を、貶めたあいつを、俺は許さない。

絶対に許さない。

あいつの正体を暴いて、この世界とも、現実とも、破滅に追い込んでやるんだ。
あいつさえ、居なけりゃ、  は手を引かなくてよかった。プログラマーとして、生きていけた。だから、あいつを。


その為なら、なんだってしよう。





研修旅行から無事に帰ってきた日。兄さんが家に帰ってきた。死んだ様な顔をしていたので、まずお風呂に入れさせて、それから食事を用意した。とりあえずコーヒーとサラダ。兄さんはお肉が好きだから、チキンソテーも。私は自分用にご飯をよそい、お風呂から上がった兄さんにも確認してから兄さんの分のご飯も用意した。


「大丈夫?起きた?」
「ん、」


髪をがしがしと拭きながら、何度か頷いた兄さんは、机の上に置いてあるあくつかのお土産を見て少し目を輝かせた。


「八ツ橋!あじゃり餅もある!」
「先にご飯。どうせろくに食事とってないんでしょ?」


それに、頷いた兄さんと一緒に手を合わせていただきますをしてから箸を進める。こうして兄さんと食卓を挟むのはどれぐらいぶりかな?確か、研旅の前に一度帰ってきて、それからまた急な仕事が入って。それぐらいぶり、かな。両親なんて、日本の家に居る方が珍しいし。私が中学生になってから海外でも仕事するようになったんだよね。あ、このチキンソテー、美味しい。謙也並には出来ないけど、そこそこじゃないかな。そうだ、今度謙也に料理習おうかな。景吾君でもいいけど、景吾君、外国料理専門だし。地味に本格的だし。たぶん、THの部屋にある今の設備じゃ出来ないし。そう考えていれば、なあ、と兄さんが声をかけてきた。


「ん?あ、まずかった?」
「いや、いつも通り美味しいよ。研修旅行どうだった?」
「楽しかったよー。あ、なんか神の子と仲良くなったな…」
「神の子?」


そう意味が分からないと言った顔をした兄さんに、笑って説明をした。兄さんは立海出身じゃないから、ちょっとしたテニス部の説明まで。


「うわー。高校生なのに二つ名?しかも神の子?うわー」
「なんだかんだ言って、中学からだし。マサだって蓮だってあるんだよ?」
「あ、そっか。あいつらレギュラーだったな。え?なんて名前なの?」
「マサがコート上の詐欺師って書いてペテン師、蓮が達人って書いてマスターって呼ばれてる」
「へえ。あれ?雅治が蓮二のこと参謀って呼ぶのは?」
「あれはマサだけ。作戦とか考えるのが蓮の担当だからじゃないかな」


それから、ファンクラブ云々の話をすれば、兄さんは持っていた箸をからん、と落とした。え、ちょ?そう兄さんを見れば、なんだよ!と叫んだ。…ああ。そっか。


「俺、高校生の時モテなかったし!」
「それは、外見がイケてるくせに、パソコンとかプログラムのことばっかり話してるし、中身が残念だからでしょ」
「そうだけど!なに!ファンクラブって!!雅治と蓮二羨ましい!」
「あーでも、マサとかは特に嫌いかな、ファンクラブ」


なんで、と不思議そうにした兄さんに苦笑いをしてから、私はファンクラブのことも話した。すると、大変だなとか可哀想とか正直な感想をした兄さん。兄さん、高校生の時はモテなかったとか言ってるけど、実はそこそこモテてたし。他人のこととかすごい鋭いくせに、自分のことだけは鈍感な乙女の恋には最悪な奴だ。タチが悪い。まあ、大学生になってからは本人にも目に見える様にモテてたけど。今も相も変わらずモテるけど。


「ん?ちょっと待て」
「どうしたの?」
「その、神の子のファンクラブはいいのか?」
「あーたぶん。神の子、黒いし」
「…美穂と一緒か」
「あ、うん。そんな感じ。でも、まあ、私は興味ないって通ってるし」
「だから雅治と蓮二と幼馴染ってこと隠してるのか」


それに頷けば、そっか、と小さく呟いたあと、兄さんは、くれぐれも気をつけろよとか色々言って、久しぶりにシスコンぶりを見た。


120811
遼介兄さん登場です。今回テニキャラ出てなくてすいません。冒頭のは、一応テニキャラですが…