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おはよう、と声をかけられ、振り向けば、案の定神の子が居た。私もおはようと返して、そのまま歩く。私の隣には愛が居て、神の子は丸井を連れて居る。朝食は宿泊したこのホテルで済ますことになっていて、これまた愛と丸井が喜ぶバイキング。席はクラス単位で指定はされてるけどそれ以外は自由。丸井は愛に何を食べるとか話し出してしまって、当然の様に私は神の子の隣を歩いている。


「みょうじさんは、朝食はパン派?ご飯派?」
「えーっと、幸村君は?」
「俺はご飯派かな。焼き魚あるとなおよしって感じだよ」
「へえ。私、朝はたまに抜いたりするし、普段から朝だけは少食なんだよね。ヨーグルトとかで済ましちゃう」
「それは健康に悪いなあ。倒れちゃわない?」
「あいにく貧血とかはないよ」


蓮の家に泊まった時とかは、ちゃんとしたご飯の朝食を蓮のおばさん(蓮のお母さんね)が作ってくれるんだけど、私だけの時とかは抜いたり、ヨーグルトとかそういうので済ましちゃうタチだ。兄さんが居ても、兄さん料理作らないから私が結局作るし。面倒くさくて、ご飯と味噌汁と納豆だけとか。徹夜開けとかの兄さんだとコーヒーのみの場合もあるし。蓮の家の朝ごはんにお邪魔したりもするけど。蓮の家のは本当に絵に描いた様な朝ごはん。家庭科の教科書に載ってたり、旅館とかで出てくる感じの和食。すっごく美味しい。


「そういえば、今日で最後だね」
「そうだね。今日は道頓堀あたりでもぶらぶらするのかな?」
「どうだろうね。丸井と有明がまた食べ歩きしたいって言ってるし…」
「本当、子豚さんだね」
「有明は?」
「愛はハムスターよ」


そう言えば、神の子はふふふっと面白そうに笑った。あ、笑顔なんか格好いい。って何を考えてんの!私は。マサとか蓮とか、景吾君や謙也というイケメンたちで見慣れてるだろ!兄さんだって格好いい方だし。わざわざ神の子なんかに格好いいとか感じなくてもいいのに!


「どうしたの?みょうじさん」
「あ、なんでもないよ」


首をぶんぶんっと振れば、訝しげに聞かれた。…不審だったか。やっぱり。
それから、会場に着くとバイキング形式になってる豪華な料理たちを見て、大食い2人組は歓声を上げる。で、案の定神の子と隣に座ってる私。向かいには愛。その隣は丸井だ。なに、あの二人のお皿。見てるだけでお腹いっぱいになるし。丸井は二皿おかずに一皿にパンを敷き詰めてる。愛は一皿におかず、もう一皿にパンを同じ様に敷き詰めてる。…もういいや。そのまま、神の子の方に視線をやれば、


「…本当に焼き魚食べてる…」
「みょうじさんは、パン?」
「あ、うん。あと、ハッシュドポテトと、サラダ。ヨーグルト、好きなの無かったから」


本当にそれで足りるの?と神の子は言ったけど、私からすれば、ご飯、焼き魚、豆腐とワカメの味噌汁、おひたし、のり、デザートに林檎、と食べれる神の子の方がすごい。そんな細い身体になんで入るの。…そう言えば、神の子とマサは同じ身長だった気が。マサは、こういう所のご飯、口に合わないと本当に食べないからなあ。痩せてる痩せてるって言われるのもそのせいだと思う。でも、マサと景吾君、身長も体重も一緒だって前言ってたんだけど、じゃあなんで景吾君はマサに痩せてるって言うんだろう?てか、あの人達、身長の癖に痩せすぎだし。少しくらい脂肪つけろって話。


「みょうじさん?」
「え?ああ、ごめん。なに?」
「いや、手が止まってるから。…具合でも悪いの?」
「あ、ううん。考え事を少し。…あれ、愛と丸井君は?」
「おかわりだって」


あいつら、いい加減にしろよな。




「あれ、  からメールきてる」


そう、パソコンを見てから呟いたのは、電話口の彼だ。彼は今、朝食を食べてきた所で、学校に登校する為に制服を着始めたところだった。なにかと思ってメールを開いた所に彼の携帯に電話が入った。ディスプレイを見れば、彼の世話好きの先輩の名前が表示されていた。それに出ながら彼はメールを開いた。いつも通り暗号て書かれているメールに思わず笑みを浮かべ、暗号に目を通した。パソコンにインストールしてあるソフトに一度通さなければならないだろうが、書いてあるだろう内容は分かって、もう一度笑みを浮かべてから、電話向こうに居る先輩に笑いかけた。

120807