TH | ナノ

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レシートを確認して、私はもう一度安堵した。
レシートには、日付、内容、謙也の直筆の名前、謙也とは全く違う筆跡で謙也のお父さんの名前が書かれている。


「…謙也、黙っちょったことがあるんじゃ」
「あ、うん。そうやろなって思っとった」


口調を戻したマサに、謙也はそう言って眉を下げながら笑った。やっぱり、謙也は分かってたんだ。でも、私達が話すまで、黙っててくれたんだ。
そして、蓮が『ピエロ』のことについて、話した。


「…そうやった、んか。…なるほどなあ」
「謙也のパソコンだった、ということは、『ピエロ』は手練だな。だが『罪』のことを理解していないし、ワナビだと俺達は判断した」
「…ちゅーか、俺んパソコン使ったっちゅーことは、俺と柳君達が繋がってるって知っとるんやろうか?」


そう聞いた謙也に蓮はどうとも言えないと答えた。
私達THと謙也が繋がっていることを知っているとすれば、呆れた情報網だ。じゃあ、そうでなかったら。つまり、THと謙也が繋がっていることを知っていなければ。


「…俺と顔見知りの可能性が、高いっちゅーことやな」
「そうなるな。誰かおるか?強い奴」
「…強い奴、なあ…」


そう言って謙也は少し考え込み、そして、言った。




「精市、結局どうするのだ」
「ああ、不二の弟のことだろ?」


捕まえた蓮二はどこかへ行ってしまったし。てか、野暮用ってなんだよ。そう思いながら、1階ロビーの売店で飲み物を購入する。すると、有明がジャージ姿でお菓子を籠に入れて居るのが見えた。ちょっと、と真田に手を上げれば、頷いてくれたので、有明に声をかけることにする。


「有明さん、どうしたの?みょうじさんは?」


確か、有明とみょうじは同室だったはず。なんで、有明だけ売店に居るんだろう、と聞けば、ふてくされた様に有明は言った。


「聞いてよー幸村君。私がお風呂入ってる間に、なまえったら杏林堂行くとか書き置きして出かけちゃったの」
「…みょうじも?」
「え?」
「あ、いや、そうなんだ。でも、髪濡れてるし、お風呂上がりにこんなとこ来ちゃだめだよ。お菓子買ったなら送ってあげる」
「え?本当?ありがとう!」


嬉しそうに笑った有明に同じ様に笑顔を見せる。…蓮二だけじゃなくて、みょうじも?そう疑問に思いつつ、有明が持っているお菓子を見て、今からこんだけ食べるんだろうかと考えたらなんだか胸焼けがしてきて、丸井と有明はやっぱり似ていると思った。

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