TH | ナノ

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「初めまして。お初にお目にかかります。
試行錯誤の上、この宛先はTH様との認識がございます。
もし違っていましたら、削除をお願いします。

改めて、初めまして。私、『ピエロ』と名乗らせて頂いているものでございます。


チームとして、
今まで活躍なさってきた、
皆様に、近付きたいと思っていました。皆様に会えるのを夢に
描いておりました。
大げさかもしれませんが、
ふざけてはおりません。
THの皆様に
一目お会いしたいだけなのです。
かなり無理なこととは承知しております。
諦めた方がいいのも、
無謀だということも、理解しております。
描いた夢は描いたままにしておくべきかもしれません。
たった一度でもと思っています。
お願いします。憧れでもある、
栄位あるあなた方にお会いしたいと思います。
返信お待ちしております。
―道化師『ピエロ』」




以上が、私達TH宛に謙也のパソコンから届いた、メールの内容。
「THに憧れていて、会いたい」と自称しているが、私達にはそれが嘘だとすぐに分かった。


「謙也!」


喫茶店に入って声をかけてきた店員に蓮が対応している間に私とマサはすたすたと中へと進み、4人席に座っている謙也に声をかけた。メニューを見ていた謙也は、ぱっと顔を上げてから笑顔で私達を迎えた。


「私、こっち側座る」
「えーなんでなん?なまえちゃん、隣座ればええんに」
「今日はマサが隣だっちゃ」


自分の隣の椅子を引いて、座る部分をパンパンと叩きながら謙也は言った。私は謙也の向いの席。謙也の隣には、マサが座る。そして、追いついてきた蓮が私の隣に腰掛けた。


「さて、注文はしたのか?」
「まだよ」
「あ、ここな、モカがオススメなんやで?」
「じゃあ、俺モカ」
「俺はストレートにしよう」
「俺もモカやなあ。なまえちゃんは?」
「じゃあ、私もモカにする」


そう言い終われば、謙也はすんません!と店員さんを呼び、注文を始める。私はマサと蓮に目配せをしてから、携帯をテーブルの下で開き、送信ボタンを押した。

メールは、『ピエロ』宛だ。



「こんばんは。
メールの返信が遅くなってすいません。
私達はTHです。お心当たりがありませんでしたら、即削除をお願いします。

メール、承りました。
ぜひ、お会いしましょう。ただし、その前にこちらから聞きたいことがあります。
全て、yesまたはnoで答えてください。
『ピエロ』のある程度の情報は私達の手の内です。嘘をついた場合は、返信をしません。

つまりは、あなたを私達の正体を知る価値があり、覚悟がある人物かを見極めるための質問でございます。

私達は、あなた『ピエロ』が学生だと言う情報を得ています。それは真実ですか。
東京でお会いしましょう。大丈夫ですか。
あなたは一人で『ピエロ』と名乗っていますか。
協力者はいますか。
最後に、あなたは『罪』を犯したことがありますか。


メールの返信は失礼かもしれませんが、今から1時間後にまでに必ずしてください。

TH」



そして。以上が、私達THの『ピエロ』に対する返信である。

120613