TH | ナノ

13th load

マサと二人で待っていれば、しばらくしてから蓮が到着した。歩きながら話そうと言って私達はホテルを出た。そもそも教師陣は殆どが会議という名の飲み会に出ていて、ホテル側に特別何かを話していた訳ではない。3人とも大人っぽい服で揃え、部屋には他に人が居るから鍵を預ける必要もない。ということで、すんなりと私達は外へと出れた。ちなみに相部屋の愛には、お菓子を買いながら、持って来損ねたものを杏林堂で買ってくると、愛がお風呂に入っている間に書き置きをしておいた。聞けば、マサや蓮も同じような対処をしてきた様で、もし誰かに見られても問題ない訳だ。
蓮が言うには、なんでも、廊下で神の子と皇帝に会ったらしく。


「…パスワード?意味が分からんぜよ」


意味が分からないと言ったそのもの様に、顔を歪めてマサは言った。今は謙也と待ち合わせをしている喫茶店に向かっている。マサは私の左側を歩き、蓮は右側を歩く。いつもの定位置だ。いったい、何が目的なんだろう、神の子。すると、暫く渋い顔をしていた蓮が言った。


「…俺は、あいつらもこっち側の人間では、と思う時がある」
「あいつらって…神の子と皇帝が?」
「ああ。…マサはどう思っているんだ?」
「俺も同意見ぜよ。…ハッカーなのか、クラッカーなのか、ワナビなのか。…まあ、真田が一緒ならクラッカーはなさそうじゃけどな」


そう言ってみせたマサは笑って付け加える。真田が、俺達に見せている顔が本当の顔ならば、じゃけど。それにいち早く反応したのは、蓮だった。


「マサ、お前何を言っている。…仲間内でお前以上の奴は居ない。弦一郎が偽れる訳がなかろう」
「…まあ、そうじゃな」


どうやら、納得した様だ。
それにしも、神の子が、ねえ。…思わず神の子に余所行きの笑顔をやめる様に言ってしまったことにより、神の子とは仲良くなった感じだけど、神の子の本性なんて私には分からない。


そして、喫茶店の前に着いた。
蓮とマサと顔を見合わせて頷いた。私はTH用の携帯を取り出し、保存してあったメールを確認する。送信ボタンを押せば、すぐにメールは送信される。勿論、こちらのメールアドレスは勿論、中のデータ、携帯の機種も分からない様に調節済み。

準備完了。

そして、私達は謙也が待っている店に入っていった。

120611