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seventh load

部活が終わり、レギュラーも平部員も帰っていく。最後に残っていた蓮二が部室を出たのを確認したあと、真田から来ていたメールを読む。先程電話で話していた用件が書かれている。見慣れた名前がいくつかあるのが気になる。


メールには、不二と、不二の弟のこと、そして、真田が協力してもらっているのは手塚だということが書いてあった。…だから、今日、東京に行くと行っていたのか。すると、携帯が着信を告げる。


「…もしもし?」


電話の向こう側の彼に俺は薄く笑みを浮かべ、彼の名前を言った。彼は少し不機嫌の様だった。



やることがまだあるからと言って精市が部室に残り、俺は最後に部室を出た。外のドアの隣の壁に背中を預け、少し待っていた。何を、と言われれば答えられないのだが。すると中から音楽が聞こえた。確か、精市の携帯の着信音だ。誰からだろうか。すると、同時に俺のスマホがメールを着信する。2通ある。はあ、と小さくため息をついてから見れば、一通はなまえ。もう一通は姉さんだった。…ここで精市に出てこられ、このなまえからのメールを見られる訳にはいかない。表向きには俺となまえは図書委員と利用者、かつてのクラスメートとしての関係しかないのだから。そう思い俺はそっと部室の前から離れた。


「…ほう、面白い」


なまえのメールには『ピエロ』から接触があったこととお腹が減ったから夕飯にしたいとのことが書かれていた。…まったく。こいつは昔から自由だな、と笑みを浮かべてから、姉さんのメールを確認すれば、研修旅行に行くならお土産よろしくと今日も泊まりですとだけ書かれていた。まあ、姉さんが泊まりになることは遼介さんからなまえに暫く泊まりのメールが入ったことから分かっていたが。

小さくため息をついてから後ろを振り返った。部室の電気はついていて、少し辺りが暗くなっていて、部室にはまだ精市が居るからなのか、部室だけ、何か、違うものに見えた。


この、今感じたものがなにを指すことになるかなんて、俺は分からないまま、ただメールを寄越してきた幼馴染に笑みを浮かべて、その隣で死にそうにしているであろうもう一人の幼馴染も思い浮かべて、歩みを早めた。

120430