TH | ナノ

forth load


「ねえ、真田。頼みがあるんだけど」


俺、柳蓮二は、こうして今絶賛隠れている最中なのである。周囲には人は居らず、唯一居るのは、壁に寄りかかる体勢で電話をかけている精市のみである。彼は俺には気付いてはいない。今の時間は部活の休憩時間だ。俺がこうして中庭の人目のつかない場所に居るのは、TTについて気になったことがあり、それをなまえに連絡していたため。そして連絡が終わったので戻ろうと思った所に、精市が電話を取り出しながら登場したということだ。

弦一郎は今日、用事があるとかで珍しく部活を休むと聞いたのだが…


「ああ、今大丈夫だった?…ああ、そう。それはよかったよ」


にこやかに笑う精市。
…さて、これはどうするか…。ここで平然と出て行くか?だが、なにをしていたかと聞かれたら、精市相手に嘘が通じるか?…それに、俺は正直言えば、THの中では一番嘘をつくのが下手だ。まあ、マサは詐欺師として磨いた腕があるし、なまえもあの遼介さんと毎日過ごしていれば勘付かれない様に嘘をつくのも上手くなる確率が高いからだが。しかも俺は、TH関係やなまえ関連は極端に下手だ。まあ、これも一般人…と言っていいだろうか、まあ、よしとする。精市や跡部などと言った極端に鋭い奴やTH以外にはばれない自信があるが。

すると、


「…?それはどういうことだい?不二が?え?」


不二?…不二と言われれば、真っ先に浮かぶのは青学の不二周助だが、聖ルドルフの不二の弟である不二裕太も不二だ。
それにしても、電話の相手は弦一郎だった。それなのに何故、不二が出てくる。


「…帰ってきたら俺の家に来てよ、真田」


そこで、詳しいことを聞くよ。
そう言って精市は電話を切って去って行った。

どういうことだ?
ただ単に、出先の弦一郎が精市に電話をしてきた。それだけのことだが。…弦一郎はおそらく東京に行ったのだろう。そこで、どちらかの不二に出会った。…電話で精市に言うぐらいだ。十中八九、青学の不二であろう。

だが、あの、電話を切った時の、険しい精市の表情。


…少し、精市と弦一郎。
彼らの周辺を調べ直しても、無駄ではないだろう。



120325
柳がmasterとして動き出します。