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11th code

さあ、謎解きをはじめよう。



部屋に帰ってから私は、夕飯の支度をしているマサを手伝いながら蓮に聞きたかったことを聞いた。ちなみに蓮は料理が全くもって出来ないのだ。前作らせてみたら大変な惨事になってしまってからはお皿出しとかそういう比較的大丈夫なものを手伝ってもらっている。


「そういえば、蓮」
「ん?なんだ?」
「東京に、蓮くらいの年の人でテニス有名な人で眼鏡かけてる人居る?ぶつかっちゃってさ。顔見たらなーんかどっかで見たことある様な顔してたんだよね…」
「…眼鏡、か」
「…今思ったんじゃけどテニスやっとる奴、多いじゃろ、眼鏡…俺達の世代だけ考えても」


そう言ってパスタの束を取り出して鍋の中に広げながらマサは苦笑した。でもね、と私は蓮から小さな皿をもらい、スープの味を確認してからスープをカップによそう。


「私が顔を見て、この人知ってるかもーって思ったんだから相当有名な人だと思うよ?」
「…確かにな。おそらく、手塚または忍足あたりかと思うぞ。貞治なども居るが、貞治は知ってるだろう?」
「うん、知ってる。あの逆行眼鏡くんでしょ?…ん?忍足?」


聞き覚えのある名字に首を傾げれば、マサがそうじゃよと笑って答えた。


「忍足侑士。謙也の従兄弟なり」





「ちょお、謙也聞いとるん?」
「聞いとる聞いとる!ほれ!」


俺はそう言うてから、金ちゃんにマヨネーズを取ってあげた。今は四天宝寺テニス部レギュラーでたこ焼きを食べて帰ることになってたこ焼き屋におった。光が珍しく用事があるからと帰ってもうて、そしたら千歳も妹がなんやら〜とか言うて帰ってしもうた。…千歳はともかく、こういうの嫌いそうに見えて案外好きな光が珍しいなあとか思っとったら、ちょうど仁王君からメールがきて、滝君の件についてやった。ちなみに金ちゃんがおるのは、日常化しとるからほとんど誰も気にしとらん。一応中学テニス部の部長なんやけどな。


「誰やったん?メール」
「ん?あ、ああ。別に。ダチやった」
「ふーん」


聞いてきた白石にそう返せば、気になりますよ〜ちゅー表情のまま黙った。すると小春が、


「そういえばあ、この前ユウ君どこに電話しとったん?」
「へ?この前?」


あーん、とたこ焼きをユウジに食べさせながら小春は首を傾げる。同じ様に首を傾げながらユウジはもぐもぐとたこ焼きを頬張っている。


「ほら〜、この前の部活前にキメた顔してお電話してたやないの」
「…ん?あ、ああ。あれやな!ダチやで!ダチ!」


この前、というのが分かったのかそう頷いて答えたユウジは俺と同じ様にダチからやと言ってみせる。そうなん?と少し気になる様に小春は首を傾げれば、それを遮る様にやかましく金ちゃんがはしゃいだ。


「危ないでー金ちゃん」
「…そういや、わい、コシマエ見たで?この前」
「は?」


にこにこと笑うて金ちゃんの近くにあったソースにキャップをつけた白石に金ちゃんはそう言うた。白石の反応は俺達の反応やった。


「遠山はん。コシマエ言うんは…越前はんことで?」
「そうやで?銀ー。駅でな、見たんやけど、声かけたらたこ焼き一緒に食べへんかってな!うまかったなあ!」
「…金太郎はん、越前君は、何しにきたって言うたん?」


越前リョーマ。
彼は、全国大会が終わった後、俺らと青学が大阪でやった練習試合に駆け付け、そしてまたアメリカに帰った。去年も、春先に青学へと戻ってきてレギュラーとして活躍し、また秋にはアメリカに帰ったんやった。…今年も?でも、なんで大阪に居たんや?

小春がそう聞くと金ちゃんは笑顔で答えた。


「たこ焼き食べに来た言うとったで!」

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