あの世界



テニプリが無いなんて、まさか。

…でも、確かに私の本棚にテニプリが無いのも、DVDケースの中にアニプリもテニミュも無いのも、それなら納得できる、けど……。…えええ…でもないの…?
はあ、とため息をついてしまい、


「どうしたの、なまえちゃん。今日は瑞希ちゃんと約束あるんでしょ?」
「約束?」
「え、そうなの?パパと本屋行こうって言ったじゃんか」
「そうよ、約束。パパは帰ってきてから皆で行けばいいから黙ってて」


ママはそう言ってパパに言った。そうだね、と落ち込んだ風に言ったパパはコーヒーを飲んだ。ちなみに今はダイニングテーブルに座っていて、朝ごはんを食べてる。5歳児である弟は私の隣でホットミルクを飲みながらパンをかじっている。…今更だけど、5歳の光輝ってすごく可愛い。

…というか、瑞希?瑞希も一緒に若返ってるの?
瑞希と言うのは私が小学・中学と一緒だった一番仲がいい友達で、テニプリ好きの趣味も気も合う友達だ。…いや、おそらく記憶はないだろうけど。


「ほら、立海までの通学路を一回確認するって言ってたじゃない」


…は?え?今、


「い、今、ママ何て言ったの!?」
「え?だから、立海まで瑞希ちゃんと行くんでしょ?」
「り、立海っ?立海って言ったのママ!」
「え?どうしたの?」
「どうかしたのか?なまえ。今年、受験して受かったじゃないか、立海大附属。しかも奨学金つきで。流石なまえ!」


そう言って嬉しそうに笑うパパ。…相変わらずの親バカぶりだ。…いや、奨学金とかそう言うのより、り、立海っ?立海大附属だって?
……いやいや、ちょっと待て!立海大附属だよ、私。聞き間違える訳がない名前だよ…。


…ちょっと待てよ?
立海、があるなら、


「…あのさ、ママ、ここ神奈川だよね?」
「そうよ。なに当然のこと言ってんの」
「…東京に氷帝とか青学とかって…」
「確かあったな、ね、ママ」
「そうね。というか、氷帝は受けたじゃない。氷帝と立海を受けたの忘れたの?」


…なんですと!!
え、あ、ちょっと待って!待って落ち着けなまえ!ここで大声出したらいくら家族だろうがあれだ!おかしいぞ!それに小6の私はまだアニメ見ても発狂したり声上げてないだろ!落ち着け!落ち着け。

そんな風に心の中で叫ぶ私をよそに両親は話し続ける。


「でもママは氷帝でもよかったんだけど」
「だめだよ!神奈川からだとすごい時間かかるじゃないか!」
「まあ、そうよね。習字もピアノも続けたいって言ってたものね。…制服は氷帝の方がおしゃれだけど」
「なまえはなんでも似合うんだよ。それにパパは立海の方が好きかな」


…とりあえず、私はコップに入っていた紅茶を飲み干した。うん。ちょっとは落ち着けた。


「瑞希ちゃん、10時に来てくれるんでしょ?準備しちゃいなさい」


その言葉を聞いて私は自分の部屋に向かった。

おそらく、この世界は、あの「テニスの王子様」の世界だ。
120401
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