昔の私と再会。そして、


大好きな音楽のアラームが聞こえて。
私は思わずその音がする方向に手を伸ばした。


掴んだ。


ばっと視界が綺麗になり、私はベッドの中で布団にくるまっていて、右手にはスマホを持っていた。なんだやっぱり夢だったのか、と安堵の息を吐いた。!夢の内容、覚えてる!布団を背負ったままゆっくりと起き上がると違和感を感じる。


「…え?」


ベッドの目の前にあるはずの大きな本棚がない。慌てて部屋を見回すと部屋の壁に沿って2つ、しっかりと置いてある。…だけどピアノがない。白のタンスも3段の小さなタンスもない。代わりに友達の家などにあるクローゼットがついている。勉強机はあった。私が学校に行く時のままである。代わりに隣にあるはずのデスクトップのパソコンは備え付けの引き出しの上に置いてあったのが専用のデスクの上に載っている。コンポもあるにはるのだが、ピアノがなくなっているため、CDやらDVDやらがいっぱい収納されている台の上にあり、その隣には私の部屋には無かった液晶のテレビとDVDプレイヤーがある。部屋の真ん中には、元々あったカーッペットがひいてあるけどその上には見たこともない白のデスクがあり、周りには何個か見覚えのあるクッションが転がっている。


「どういうこと?」


そして。高校の制服がないのだ。急いで私はクローゼットを開く。すると、昔私が着ていた服がかけてあったりして、中が広いせいか使っていた白のタンスはそこに入っていた。でも、制服がない。そして、混乱するまま私はクローゼット(たぶん3畳ぐらいはある。ウォーキングクローゼットって言うのかな?)の中にあった姿見に写った姿を見て絶句した。

そこに写っていたのは、約5年前の、小学生6年生の時の私だった。
高校時代にはショートにしていた髪が長い。私は慌てて右足の膝を見た。そこには高校1年のとき、事故に遭い消えなかった傷が残っているのだ。高校2年の私なら。


「…ない…え、ほ、本当に時間戻ったの?」


で、でも。この部屋は私の部屋じゃない。確かに中身は一緒だけど、私の部屋は1階だった。…この部屋は窓の位置とそこから入ってくる光の加減から、たぶん2階。…どういうこと?


そして。私ははっとさっき神様を名乗る男の人が言っていたのを思い出した。

…違う世界。


「ええええええええ。まさかあ…」


でも。確かに私は縮んでいる。…違う世界か…そうなのか…。

なんか今、すっごい疲れた。まあ、家族が一緒だって言ってたし…いいか。
とりあえず、と立ち上がって私は私服に着替えた。カレンダーが3月なのを見るとこの服装で大丈夫だよね。…すると、中学受験はもう終わってるのか…そっか。


「あれ?」


そして、ため息をついて部屋の壁にかかっている時計を見れば、まだ6時だった。窓の光的にはたぶん朝。伸びをしてなんだか落ち着かない部屋の中で、慣れ親しんだクッションを抱いていると、本棚が目に入る。私は読書好きで、2つに分かれた本棚を見てわくわくした。配置が変わっているみたいだから、まずは大好きなテニプリを探す。…小学生の頃は知らなかったけど、一番下の段にぬらりひょんの孫が入ってることからすると、テニプリもきっとあるはず!


「…ない!ええ!!ない!」


そう、なかったのだ。
…どういうことなの、と落ち込んだ時、はっとしてDVDとCDを全部出してきた。…我ながらすごい過保護されっぷりだな。私の両親は過保護で、まあ、成績がすごく悪くなければ大体のものは与えてくれる人で、私と弟をそれはもう愛してやまない。私も大好きだけど。テニミュキャストだった人のCDやキャストだった人が入っているバンドのCDなど、そういうのはある。ってことは、DVDとCDも持っていたままの内容のはず!だけど、テニミュのDVDだけないのだ。マグダラとか、テニミュキャストが出ている舞台のDVDはあるのに!


「ママ!ママ!」


もし!もし、この世界に!

テニプがないとしたら!…私は終わる!!!


「あ、なまえちゃん、おはよう。どうかしたの?」
「テニプリって知ってる?知ってるよね?」
「なまえ早いじゃないか。おはよう」
「あ、パパ、おはよう。ねえ、パパも知ってるよね!テニプリ!」


私は基本的オープンだから両親はテニプリの存在を知っているし、母なんかは一緒に格好いいねえと卒業しているキャストたちが出ているドラマやら何やらを見ていたクチである。弟もテニプリ好きだった。


「なに?それ」
「なんだ?新しい漫画か?パパにも貸してね」


私は、予想していた事態が起こっていることに、唖然とした。

120225
時間が戻ったことより、テニプリが存在しないことの方が動揺を隠せない主人公です
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