「葵には兄が居るのは知ってる?」
「噂で知ってるだけだな。なんか、名字が違う兄貴が居るって」

越前は一口お好み焼きを食べ、俺に聞いた。頷いたあとそう言えば、越前はそっか、と言い、まだテーブルの端に置いてあった集合写真の、雲雀恭弥を指差した。


「恭弥さん、葵の実兄」
「っ、は?」
「だから、雲雀恭弥が葵のお兄さん。葵の本当の名字は雲雀って言う」


嘘だろ、と言いたくなったが、でもそれなら話が繋がる。篠原さんが死んだのは事実だ。篠原葵として、あの時間違いなく死んだ。だけど、そもそも最初から篠原葵なんて人物は存在しなかった。偽りを事実に戻しただけ。俺が理解したことが分かったのか、越前は小さく頷いて、真剣な表情で言った。


「俺達が復讐をしようと言っても、首を一向に振らなかったあの人が、最近あいつらに再会した。なにも、変わって居なかったらしい」


越前はそう言って黙ってしまった。あの人。あいつら。代名詞だけで説明をされたが、すぐにそれは誰を指しているかは分かったし、理由も納得出来た。正直言って、あの先輩達は、抜け出せない人達だ。あの女の罠にハマって自力では抜け出せない可哀想な人達でもある。だが、わざわざそれを助けようとは思わなかった。やっぱり先輩達も被害者なのかもしれない。だが、俺達は一度事実を話している。…海堂先輩なら、大丈夫だと思った。なんだかんだ言って俺達後輩のことを心配してくれたし、海堂先輩なら事実を他のメンバーに伝えてくれると思った。少なくとも、乾先輩には話してくれると。…乾先輩に伝われば、一気に広まる筈だった。部長や副部長。タカさんや不二先輩、菊丸先輩。それか、桃ちゃん先輩に。
だけど、違った。海堂先輩が話したのか、話してなかったのかなんて、俺達には分からなかった。でも、篠原さんの味方じゃなかったことを考えれば、…そうだったのだろう。味方じゃなかったなら、話していたとしても、変わらない、何も。




「全てを知っているのは、跡部さんに仁王さん、幸村さんの三人だけ」
「全て?」
「…葵が、俺達がボンゴレだと言うことを含めて、全て。あのときのことなら、立海や氷帝、四天宝寺ぐらいだよ」
「…それで、なんでその三人が?」



千歳先輩が手際良くお好み焼きをひっくり返すのを見つつ、そう聞けば越前はやばうまそうと小さく呟いたあと、笑って言った。




「跡部さんはツナ…ボスの幼馴染み。仁王さん、…雅治さんはボンゴレの情報屋。幸村さんは葵、恭弥さんの従兄弟だよ」



え?…跡部さんは、沢田綱吉の幼馴染み。仁王さんはボンゴレの情報屋。幸村さんは雲雀兄妹の従兄弟?凄い関係性だな………てか仁王さんがボンゴレの情報屋?!はっとなって写真をもう一度見せてもらったら、やっぱり写っている。………もう驚くのに疲れてきた…
さて、これからは堀尾にしてもらうことを話そうか。そう言ってみせた越前に俺は慌てて言った。




「勿論協力するけど、明日から俺、東京だぜ?」
「知ってる。知ってる上での協力だよ」




そう言ってまた見たことのない笑顔で笑うから、こっちは苦笑いををするしかなかった。






さて休憩時間もそろそろ終わりにしましょうか

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