どうしてかってことと、今の状況、知りたい?と越前は屈託なく笑う。その笑顔、いや、俺は越前の笑い顔なんか、指で数えるぐらいしか知らない。試合以外。コートの外で見せる笑顔はいつも挑戦的な笑み。みんな、そうだったはず。そして。今見せてる様な屈託のない笑顔なんて見たことがあっただろうか?


「…もちろん。…何より、本当なんだな?」


何が、なんて言わなくて分かるだろう。それにニヤリと笑う越前。今度はあの挑戦的な笑みだった。千歳先輩と金色先輩は知っているんだろう。届いた4人分の玉をそれぞれに配り鉄板に油を引く。それを見つつ、越前はお茶の入ったグラスを酒みたいに仰ぐ。


「ああ、本当だよ」


その言葉に一気に力が抜けた。ああ、俺は、俺達は、あの人を殺してなんか、居なかった。…生きて、いたなんて。篠原先輩は、生きてる。たったそれだけのことなのに、世界が色付き始め、変わっていく。


「…さて、どうして葵が生きているのか話そうか」
「…ええのん?本部も関わるんとちゃうの?」


金色先輩が心配そうに越前を伺いながら聞いた。それにふっと笑った越前。金色さんにも千歳さんにもお話ししたでしょう、と緩く笑いながら。…今更だけど、こいつ変わりすぎじゃないか?あの頃だったら、こんなに人当たりよくなかったし。大丈夫と言って続ける。


「それに、葵が望んだことだから」


それに、葵さんって呼び方が葵に変わっている。…なに?どういうことだ?もしかして、


「…篠原先輩って本部勤めなのか?」


そう俺が言えば、3人揃ってにこりと笑う。


「そうだよ、堀尾。葵は今、本部で社長補佐をやってるよ、それとこれは非公式だけど風紀団体の手伝いもしてるよ」
「風紀財団って…雲雀恭弥の?…大丈夫なのか?」


雲雀恭弥って言えば、並盛中出身の元・風紀委員会委員長。群れるってのが嫌いで、人がたくさん群れてたりすれば、容赦なく牙を向けるっていう、一人を好む人間だって聞いたことがある。風紀財団は、日本で唯一の関西支部以外の、唯一ボンゴレ関係のものだと聞いたことがある。


「え、大丈夫だけど……ああ、そうか」


そう言って、越前は一枚の写真を胸ポケットに入れてあった手帳から抜き取る。それを俺の方に寄越した。何人かで撮ってある、最近の写真だ。


「…あれ、これって越前?」
「…他に誰が居るわけ」


そう言って越前が頷く。その写真の越前はなんか美形な人達ばっかと一緒に屈託なく笑っている。越前の隣に居る奴は、黒髪でキレ目の男だ。うっとしそうだが、緩く笑みを浮かべている。


「その人が雲雀恭弥」
「……へえ。…想像と違うな」
「へえ、雲雀ってこん顔しちょるんか」
「あらあ、いい男やないの〜」
「あれ、先輩達知らなかったんですか?」


その写真を覗き込む様に千歳先輩、金色先輩が口々に感想を言ったからそう聞けば、二人揃って頷いた。…篠原さんのこと(生きてたとか)知ってたから、雲雀恭弥も知ってると思っていたけど、どうやら違うみたいだ。金色先輩は嬉しそうに言ったあと、越前の分のお好み焼きをひっくり返した。


「で、その隣が、葵」


雲雀恭弥の隣に居る、長い黒髪の綺麗な笑顔の人。あの頃の篠原先輩と、変わりない。


「で、この中央の白いスーツ着てるのが、沢田綱吉ね」
「沢田…?ってえ!ボンゴレの、社長のっ?」


そう言えば、うんとウーロン茶を飲みながら越前は頷いた。周りも全員幹部だよとさらりと言った越前。ちょ、どういうこと?


「なんで、お前そんな凄い人達と写真撮れてんの…」
「俺とバジルがCEDFのトップ2だから」
「…………は?」


けたけたと笑った越前は、写真の中の優男を指差してこれがバジルねと言った。その男の隣は、他の人達と比べれば歳が若そうなくしゃくしゃの黒髪の男が立っていて、二人とも他の人達と同じで綺麗な笑顔だ。


「…さて、そろそろ本題にしようか」


越前はそう言って、話し出した。





さ て き み は う け と め れ る の だ ろ う か

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