「とりあえず、お店入りまひょか?」

「うん。俺、急遽こっち来ることになって、何も食べてないんだよね」

「それなら、いい店があるっちゃ」



越前。久しぶりに会った、突然の再会の相手は越前だった。なんでここに居るんだ。本部勤めで今日会うはずの人が越前なのか?確か本部はイタリア。だったら越前は今、イタリアに居るのか?ふつふつと生まれる疑問に頭がぐるぐるする。すると3人で話していたうちの一人。越前だ。越前が俺の傍まで来て、笑顔を見せた。


「説明、欲しいよね?堀尾」

「…して、くれるんだろうな、越前」

「もちろん。葵の味方だった奴に今回は外野って訳にはいかないだろ」


そう言って笑う越前を俺は知らない。あの人が来てからは、篠原先輩も越前も、もちろん他の先輩達も。あまり笑わなくなった。黙々と練習をする。そのあと、帰りは賑やかになるけど、それに越前と篠原先輩が加わったのなんて。あの人が来てからは見たことが無かった。

外野。確かにそう言った越前。今回はってなに。何かまた起こってるのか。そう悶々と考えていれば、千歳先輩の行きつけのお店に着いた。お好み焼き屋で、経営してるお婆さんはボンゴレで以前勤めていたらしく、会社の話をしても大丈夫な店だ。というのも、ボンゴレは本部がイタリア。日本にあるのは日本関西支部のみ。能力>年齢。そんな会社は日本には少ない。俺が知ってるだけでも、最近ATBがそうなってきたらしいがそれも跡部さんが専務になったからこその実力制だ。日本にある会社は、古いしきたりや決まりに沿っている会社がほとんどだ。


「なに食べるっちゃ?」

「…お腹空いた。俺、機内食って苦手で夕べからなんっも食べてないの」

「じゃあ、この超ウルトラ大車輪イカ玉は?」


金色先輩がそう言って越前にメニューを見せる。ちなみに、鉄板の向こう側が越前、金色先輩。越前の前が俺、俺の横。つまり金色先輩の前が千歳先輩だ。越前はその名前を聞いて、懐かしい奴を思い出すと笑ったあと、それを頼んだ。俺はイカ玉。金色先輩が豚玉で千歳先輩がランチだった。


「それで、早速本題だよ、堀尾」


まずは自己紹介。そう言って越前が取り出した名刺。俺も咄嗟に自分のを出して交換した。越前のを見て、唖然とした。


「お、まえ、」

「驚いた?」


くすくすと笑った越前。こんな風にしょっちゅう笑う奴だったっけと思いつつ、もう一度名刺を見る。そこには、中央に越前の名前。名前の左上に門外顧問(CDEF)と書いてある。

CDEF。門外顧問チームと言われる部署はイタリアにある本部にしかなく、そのチームは社長である沢田綱吉(もちろん会ったことがし名前しか知らない)の父親がリーダーをやっており、最近は2人の若い年齢(それこそ俺達と変わらない歳だと聞いた)のツートップが沢田社長の父親と3人で動かしていると聞く。本部に数多の部署、チームがあるがCDEFはそれとは少し訳が違った。CDEFとしては本部の仕事には基本的に関わらないが、CDEFメンバーは本部部署のいくつかに分散して所属しており、有事の際は独立した立場で本部と連携すると聞いた。


「…お前、すごいな」


素直に出た感想はそれだけだった。そう呟けば越前は、葵の方が凄いよと言った。…こいつは、何を言ってる。まるで、まる、で!




篠原先輩が生きてるみたいじゃないか! 思わず、掴みかかりそうになった自分を抑える。必死に。越前は俺の様子を見て、ゆるりと口元を緩ませた。生きてるよ。そう言った越前に、俺は何も言えなくて。

…篠原、先輩が、生きてる?

救えなかった。俺達が味方しているはずだった。守れなかった。いつも守ってもらっていた。まだ、ありがとう、も、ごめんなさい、も、言えてなくて。



……篠原先輩が生きてる?


そしてその知らされた事実はいとも簡単にすんなりと飲み込めたのである。

まるで。そうだと分かっていたかの様に。






ゆ め と げ ん じ つ と そ し て 、

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