…分かっていた。全部。分かっていたんだ
だから、君がすることを俺は止めない
いや、止める権利すらないのかもしれない
これは俺達が受けるべき罰で、少なくとも俺は君への償いにこれがなると言うのならば、喜んで死だって受け入れよう
ただ、君が涙しないことだけを祈るよ
もう、君は俺達のことで何も思ってくれないと思うけれど
ずっと、好きだったんだ、
「クフフ、葵、今日はどこに行くんですか?せっかくのデートですし、」
「まずは映画でしょ?そのあとは骸が行きたがっていたお店に行きましょう?」
久しぶりに本屋に行き、不二と待ち合わせをしてる時だった。そう、話す葵さんと男の人が本屋に入ってきたのは。近くに俺が居るのに葵さんは気づかない。
「そういえば、葵、リングはどうしたんですか?」
「ん?いつも通りチェーンに通してあるよ」
「ほら、あの方達が今日来るでしょう?本当はもう少し前に来るはずだった方々が」
「ああ、XUNXUS達ね」
そして、聞こえてくる会話に出てくる名前と単語に声を上げそうになった。
骸。リング。XUNXUS。
リングはもしかしたら違うかもしれない。しれないけど、骸にXUNXUS。
間違い様のない、名前。
骸--六道骸。
10年前、ボンゴレのボスとまだ集まっていなかったがその少しのファミリーと乱闘。ボスに負けた六道骸は、復讐者の牢獄へと閉じ込められるが、何故かその後すぐに、ボンゴレのリング争奪戦--暗殺部隊と守護者達の戦い--に守護者・霧の守護者として参戦した。
XUNXUS。
--リング争奪戦でボス率いる守護者達と暗殺部隊で戦う。暗殺部隊のボスで、ボンゴレ10代目ボスの座を今のボスと奪い合った。
リング。
それは、進化したらしいマフィア界では今や無くては生きていけない代物。(だと綾香から聞いている)現に俺も仕事がない時は持ち歩く小さなリング。それは、俺達がラルツォーネファミリーだという証でもあり、まだ実践の場数は少なく人も殺したことがない俺達の唯一の武器だった。
…なんで、そんなものの名前が、葵さんの口から、出て来るのか。
分かっている、つもりだった。
葵さんが、葵ちゃんで、何をするかは分からないけれど、恐らくは俺達に復讐、葵ちゃんが人間以上の、神様ぐらいの広い心の持ち主だったら、俺達を思い知らせるために。
…許してくれるだなんて思っていなかったし、君が死んだだなんて思っていなかった
葵ちゃんが俺の店に雲雀葵として来た時、見せた目が、確かに葵ちゃんだった。…それは、葵ちゃんが見せてくれたもので、そうじゃなかったら俺が見抜けることは無かった。
マフィア界の言葉が出て来た、ということは、葵ちゃんはやっぱり一般人じゃなかった。
六道骸とXUNXUSの名前が出て来たし、少なくともボンゴレだ。もしかしたら、幹部かもしれない。
…君は、やっぱり復讐しにきたんだよね?葵ちゃん
…俺は、止めないし、止める資格を持たない。罪は受けるつもりだし、仲間にも伝えるつもりもない。
たぶん、もう不二に会ってるんだったら、次は不二かな?それとも違う人だろうか。
どちらにしろ、俺は、君を止めない。
君を先に傷付けたのは俺だし、
裏切ったのも俺だし、俺達だ。
ごめんね、葵ちゃん。
信じてあげれなくて、ごめんね。
早く、これを、謝るだけでも、あの時君に伝えていれば、何かが変わっていたんだろうね。
…例えば、君の身体に残ってるだろう、あの時の傷痕は、少なくとも無かっただろう
本当にごめんね、葵ちゃん
も う す ぐ だ ね