「たっだいまー」

「あら、お帰りー、ブン太ー手紙届いてるわよー?」

「は?手紙?」




店から帰り、実家に足を運んだ。一週間に何回は帰る様にしてる。なんてたって弟達が俺と遊ぶのを今だに楽しみにしてるからな。俺が中3の時、小学3年、2年だった弟達は、高2、1年になり、今はゲーム対戦とか、テニスとかで遊んでる。…というより、じゃれてるな、あれは。

実家にそう、入っていけば、母さんの声が聞こえた。リビングに入っていけば、紅茶を飲んでる母さんが居た。あいつら(弟達)は部活だろう。父さんは…今、5時だからまだ仕事だろう。

テレビを見ている母さんの近くに座り、注いでくれている紅茶にミルクを入れてと言いながら、テーブルの上に乗っている手紙を手にとった。


表には、消印無しで丸井ブン太様。
裏は、




「たしか、あんたが部活一緒だった子よ。途中で転校しちゃった子」

「は?」



そんな奴は、たった一人しか居ない。あいつだ。突然転校して行ったあいつ。幸村と一緒に俺達に言ったあの一言を俺は、絶対に忘れない。




「……に、おう」




裏には、癖の残るあの頃に似た字で、「仁王雅治」とだけ書いてあった。

…消印が無いということは、直接俺の家のポストに入れてきたんだろう。と、いうことは帰ってきたのか…?いつ、一体?







「…転校するのは、これから、守る為なんじゃ。葵を、あいつらと。ここ、に居ても、お前らに迷惑がかかる。…いや、赤也、そんなたやすいことじゃないんじゃ。
……下手したら、命に関わる」

「ここは、俺が守ることになってる。…仁王は、あっちに行かなくちゃいけない」

「詳しい事情を話せない俺達を嫌ってくれて構わん。…でも、大人になったら、ちゃんと説明するから、今は、笑顔で見送ってくれんか?----すまんのぅ、みんな」









…あれから、10年経った。未だに仁王の消息はわからない。幸村くんに聞けば分かるだろうが、誰も、聞かなかった。仁王の、言葉を、信じていたから。


………会ったら、まずは一発だな。




そう思って手紙を開けた。






【丸井ブン太様。

XX年度氷帝、立海中学男子テニス部合同同窓会にご招待いたします。なるべく、ご参加のこと願います】


下に日付が書いてあって、参加不参加の葉書はない。代わりに、一番下に手書きで書いてあった。







【ブンへ。
久しぶりじゃのぅ。仁王雅治じゃ。
あの時、我が儘すぎる別れをしたのに、封筒を開けてくれてありがとう。
…俺が、どんな理由であの時、皆と別れたのか、それを話す時が来た。氷帝も一緒なのは、氷帝にも関係者が居るからなんじゃ。……これは、葵のたっての願いでもある。俺達は、全て、覚悟しちょる。
俺達は、正しい訳じゃないし、正義の味方でもない。それを、知ってくれると言うなら、今週の土曜日、並盛中グランドに19:30に来てくれ。  仁王雅治】







…馬鹿、やろう。
何が、覚悟をしてるだ。
俺達は正しい訳じゃない?正義の味方でもない?

…そんな危ない仕事をしてんのか、お前は。とにかく、お前を一発殴るのはもう決定事項なんだ。
お前から、連絡が来たら、どんな状況でも会いに行くって決めてた。あの日、あの時、俺達を置いて行ったお前を、一発殴るだけで許してやるっつってんだ、感謝しろよ、仁王。



……絶対に、お前が生きていて良かったとかそういうことは言ってやんねぇからな。







そう、思った時、携帯が鳴った。
ディスプレイには、【切原赤也】。


多分、コレのことだ。ははっ、やっぱお前幸せ者だよな仁王。


そう笑って、携帯をとった。









な が ね ん の お も い を 、

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