「ナイス演技だったよ、武!本当ありがとう」
「ははっ、葵に褒められると照れんのなー」
仕事が今日は休みな私と武は寿司屋の帰り道を歩きながら談笑をする。武には本当に感謝だ。だって、
何 も か も 台 本 通 り に 行 く 様 に 演 じ て く れ た も の
「まさか、あいつらが同業者で台本を書き換えるとは思わなかったのな」
「そうね、でも」
「…?」
でも、予期せぬはつきものだし、そういう展開は大好きよ、私
「……ははっ」
私のそれを聞いて暫く黙った武は、笑いとともに会話を続ける、はずだった。
「流石、闇の、」
たぶん、闇の脚本家、と続けるつもりだったんだ。
「…あれ?君は、新しく来た、山本君、」
「……あ、乾、さん」
…まさか、ここでまた筋書が崩れるのは予想外だったけど、それもまた余興。
「お出かけかい?今日は、君は休みを取ってたしね」
「…ええ、まあ。ちょっと野望用がありましたしね」
スーツ姿の、乾先輩は、くい、と眼鏡を押し上げて、サングラスをかけた私を見る。
「そちらは、彼女かな?」
「あ、こいつは…」
言い淀んだ武のスーツの袖をくん、と引っ張る。武より軽く頭一個分は小さい私に武は少し屈んだ。
そして、そっと武にイタリア語で告げた。
驚いた顔した武は、本業(マフィア)で培ったポーカーフェイスですぐに笑顔に戻る。…そういえば武の前の任務で、確かスパイとしてあるマフィアに潜入してたんだった。
「彼女じゃありませんよ。こいつは、」
「こんにちは。私、雲雀と申します。彼女じゃなくて、同僚なんです」
にこり、と笑いながらサングラスを取って、乾先輩に軽く会釈をする。
「……っ、君は、」
「…私の妹のことは兄から聞いています。お世話に、なりました」
私の顔を見て表情を変えた乾先輩にそう言う。妹、?と、小さく呟いた乾先輩に、
「…篠原葵は私の親友であり、義理の妹なんです」
と続ける。…それで名字が、と言った乾先輩。そして、暫く黙ったあと、
「…俺は、乾貞治です。…妹さんのことは、本当に残念でした」
「…乾、貞治さん、」
これから山本のことよろしくお願いしますね、と笑いかけて、乾先輩の眼鏡の奥の気持ちを探る。
あ な た は 今 何 を 思 っ て る の ?
「……乾さん、」
「はい?」
「…私、山本は仲間で本当に、大切なんです。仲間だから、傷つけたくない」
こんなこと言うのは規約違反なのですが、と前置きをしておく。
「山本は、乾さんの勤めている証券会社の不正を探る為に社長さんからカンパニーに依頼があり、それで来ています」
「そう、なのかい…?」
「ええ、」
「…だから、敵が出来ます。不正をしている人達は山本を嵌めようとするでしょう。その時は、乾さん、中立を守るか、山本の味方について上げて下さい、」
仲間が居るのは心強いですから、
「それゆえ、仲間に裏切られたら、たまりませんけど」
「はー、焦ったのなー」
「ふふっ、上手くいったわねー」
基地に帰り、ちょうど大広間(いつも皆でご飯を食べる所)に綱吉と雅治がいて、次の雅治の任務の話(大抵が情報収集で、あまり乱闘みたいのはしない。それは、恭兄とか了平さんとか隼人とか武とか、他の人がする)をしてたみたいで、後でコンピューター室に来て、と言って雅治は行ってしまった。
綱吉がお茶を入れてくれ、さっきまでの話をちょうどし終わった所だった。
「ああ、まさか、『台本通りに行く様に誘導するから紹介して、』なんて言われた時は流石に焦ったのなー」
「まあ、上手くいったでしょう?
乾先輩は、ラルツォーネの中でも情報担当でしょう。たぶん私と、武を調べてくる」
「おっと、それは恐いね」
と、綱吉は紅茶の入ったカップを片手に肩を竦めてみせた。私はその綱吉を見て、ふふ、と笑いが漏れた。おお、と武が面白いものを見た、と感じに笑う。
「雅治とどっちが強いか面白いと思わない?」
「まあ、ボンゴレのネットワークはほとんど雅治に任せてあるけどあいつが負けんのなんて信じられねーのな!」
「まさか。そんなこと、有り得ないわ」
悪ふざけを続ける綱吉は、くすくすと笑うと、まあ、と前置きをし、
「正一君も、マーモンも居るし、ちょっとだけ向こうが優秀でもまず無理でしょ」
そう言って、にこり、と笑った。私は、一口紅茶を挟み、そして言う。
「……早く、始めたいなぁ」
「何をなのな?」
「同窓会、」
「…同窓会?」
「ああ、それならさっき雅治から聞いたよ。正式に決めたってね。俺から景吾に連絡しといたし、楽しみだね!」
なー、何ー同窓会ってなにー、と言う武の隣で私は、ふふっ、とまた笑った。
わ た し が し は い す る
(乾編スタート)