「あ、侑士!」

「葵やん」

「数日ぶり!今日からよろしくね?」

「おん。恭弥も含めて、改めてよろしゅうな」

「…群れるつもりはないからね」





同僚が言うには、今日から来る、と言ってもその先生たち二人は午後から来るらしい。それならば、お昼を食べにロビーを通る時、見ることが出来るかもしれない。

お昼休み、僕と同僚がロビーに行くと、そう会話する3人が見えた。

3人とも白衣をきていて、全員黒髪。
遠くからじゃ、それぐらいしか分からない。





「葵、侑士にあまりくっつかない方がいいよ」

「恭弥、俺の扱い酷ない?」

「まあまあ、恭兄も侑士も、落ち着いて、ね?」





その3人は、紛れもなく、忍足侑士と、


葵ちゃんのお兄さんの、雲雀恭弥。




そして、篠原葵。








「葵ちゃん…?」

「え、お前、知ってんの?!」






思わず、名前を呼んでしまった僕に同僚は隣で声を上げ、案外近いところに居た、3人は振り向く。

葵ちゃんは、振り返り、






「…どなた、ですか?」





そう、言った。






「…葵、その人、不二周助だよ。前、話しただろう?」

「不二、周助?」

「…ほら、前俺が怒られたやん。
………篠原ちゃんが、青学マネージャーやったことを黙っとったこと」

「…じゃあ、あなたが、」





そう僕を見た、葵ちゃんは、言った。





「…こんにちは。葵の親友の雲雀葵です。こちらは兄の雲雀恭弥。…よろしくお願いしますね?」

「…え?どういう、」

「葵ー!」

「…謙也走んなや。コケるで?」

「ほんま、ダッサい先輩スわ」

「なんやと財前!!」

「け、謙也さんに、蔵さんに、光!!」

「葵っ……無事、やったんやな。……謙也さんに騙されたか思たわ」

「ごめんね。…心配してくれて、ありがとう。何年ぶりかな?」

「"あれ"からやから、ちょうど、10年ぐらいやろ」






そう、葵ちゃんに抱き着いたのは財前で。ああ、そういえばこの病院の附属大学で6年、つまり今はこの病院でインターン中らしいと聞いたことがある。
忍足謙也は小児科の医師だし、白石に至っては、僕と同じ薬剤師だ。




一体、どういう、こと…?






「すまんな、不二。
あいつら最近ようやっと再会したばかりやし、財前に至っては今日再会なんや」

「あの、子は、」

「…僕の妹が?」

「……だって、君の妹は、葵ちゃんじゃ、」





そう言った僕に雲雀君は、僕の白衣の胸倉を掴んだ。





「君にその名前を呼んで欲しくないな。
……篠原葵は、血が繋がっていないのさ。あの子が、血繋がっている方の妹」





そう言って、葵、と雲雀君は呼んだ。四天宝寺の3人と話していた雲雀葵が、満面の笑顔で振り向く。


それは、あまりにも、葵ちゃんに似過ぎていて。





「なあに?恭兄」

「僕は先に行ってるから、そこの人達とかと話してたらいいよ。…ほら、侑士。案内」

「"そこの人達"に俺は入ってへんのね…。
まあ、ええわ。謙也、白石、財前。葵んことよろしゅう頼むわ」

「言われへんでも」




そう言って、雲雀君と忍足侑士は去って行く。





「私、イタリアから派遣されてきたんです。兄が脳外科。私が精神科です。これから、よろしくお願いします」





綺麗に会釈しながら黒髪をたなびかせ、雲雀さんは微笑んだ。





「…葵ちゃん、とは、」

「…あの子は、私の親友で、義理の姉妹でした。ですが、10年前、いきなり姿を消してしまい…。でも最近、青学に行って分かったんです。…その節はありがとうございました」





…そうか。雲雀さんの声が聞いたことがあるかもしれない、と思ったのは、あれだ。



あの日、青学にテニス部で集まった日に、女の人が、葵ちゃんを訪ねてきた。その女の人は、確か、雲雀と名乗っていた。









………それだけ、だよね?




ぼ く ら の さ い か い だ よ

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