「篠原葵、か」






前、ファミリーの皆で青学に集まっていた時、来た二人の女の人が言っていた、名前。







「……葵、」


『不二先輩!』









昔の、後輩で、仲間で、





『不二先輩っ!』


『もうっ、何やってるんですか!そこ座って下さい!』


『ふふっ。不二先輩たらー!』








僕の、初恋。






………篠原葵。










葵ちゃんは、一個下の2年生で、僕達が2年生、桃と海堂、葵ちゃんが1年生の時から、ずっと一緒にテニス部でやってきて、凄く、大事で。


大好きで。



葵ちゃんは、いい子で、凄く明るくて、元気で、皆と仲がよかった。

他の学校、例えば、氷帝や立海、四天宝寺だ。そして、何故か、並盛。


一人暮らしで、親の話は一度も聞いたことが無かったけれど、暗黙の了解、というものだろうか。葵ちゃんの親の話は、自然にタブーとなっていた。




だから、誰一人として、葵ちゃんに家族は居ないものだと、疑わなかった。



なのに、ある日のことだった。









『手塚ー!なんか、分かんにゃいけど、門の所に青学じゃない学ランの人がいるらしいにゃ!』

『…それが、どうかしたのか?』

『なんか、どう見たって中学生なんスけど、バイクが傍にあるんスよ!』

『ああ?嘘言ってんじゃねーだろうな?!桃城!』

『ああ?!お前ふざけんじゃねーよっ!!海堂のくせにっ!!』

『まあまあ、二人とも落ち着いて、って!』

『で、どういうことだい?菊丸、桃城』

『あ、乾ー!
なーんか、人待ってるよー、みたいにゃ?』

『どういうことかな?』

『本当だね、タカさん』

『……すいません、皆さん、私、めちゃくちゃ心当たり、あります』


『は?』


『多分、その人…。
あの、黒髪で切れ長の目してませんでした?学ランは羽織ってて、風紀委員のワッペン、つけてたり』

『あ、ああ!葵、なんでんなこと知ってんだよ?』

『あ、あははは』

『…葵?ここに居るんでしょ?』


『あ、あの人にゃっ!!』

『あれ?あの人、って確か、並盛の、』



『やっぱり…恭兄!どうしたの?』

『((((恭兄ぃ?!))))』

『どうしたもこうしたも、赤ん坊と沢田綱吉が五月蝿くてね。果実は咬み殺してあげたけど、沢田はそうはいかないしね』

『…あー、今日集まる日だったっけ?』

『そう。だから、この群れ、鬱陶しいし、門で待ってるから、早く来てね、葵』


…あの時、あの男子はそう言うと僕達を睨みつけて、静かに踵を返して、学ランが靡いていたのを覚えている。




『葵ちゃん?!今の男子、知ってるの!?』

『え、あ…はい。……私の、兄です』

『へえ、兄……って、ええ?!』

『え?どうしたんですか?結構、似てますよね?よく言われるんですけど』

『いや…あの、今の人って並盛風紀委員長の、雲雀恭弥じゃ、』

『え!雲雀恭弥?!なんでタカさん、そんなこと知ってるんスか!』

『え、親父の知り合いの寿司屋さんが、並盛に、店構えているみたいで、そこの息子さんが、並盛中に、居て、』

『え、でも、名字、違う』







そう。あの時、葵ちゃんは、笑って、





『ちょっと、事情があって。恭兄は、本当は凄く優しんですよ?』







並盛最強(最恐)風紀委員長、雲雀恭弥を、



嬉しそうに、笑って、言った。












あの人は昔、
(不二編スタート)

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