「…葵、お疲れ」
「恭兄…迎えにきてくれたの?」
河村寿司を出て、暫く歩いて、並盛に入ると、恭兄が商店街の入口でラフな、カッターシャツにジーパンという、日本で見た久々な洋服で、少し嬉しくなってしまった。
「…どうだった?」
何が、なんて無かった。
恭兄は只、そう言って私の持っていたバッグを持ってくれ、そのまま歩き出した。その隣をしっかりと、歩きながら、私は答えた。
「……リョーマの言う通りだった。
当時は知らなかったけど、篠原葵じゃなく、雲雀葵だから言えるわ」
『リョーマ?電話して大丈夫なの?』
『今は大丈夫。すぐ仕事に戻るけどね。…でも、やるんでしょ?』
『…うん、』
『……最初の標的は、』
『…タカさん…河村隆よ』
『……タカさん、は、』
『…うん、分かってる。私の無実に気付いてた。…だから、一番、許せない』
『俺だって、そうだよ。…落ち着いて、聞いてね、葵』
『?、うん』
『タカさんは、』
タカさんは、
「やっぱり、私を、篠原葵を好きだったし、篠原葵が死んだことを引きずってるわ」
『葵のことが、好きで、それは今もだよ、きっと。…多分、葵が死んだことを引きずってるよ』
そう、と恭兄は目を細めた。
笑ってるんじゃない。目は、もう、狩りの目だ。
「葵のシナリオ通りだね」
「うん、」
「…明日は、」
「忍足病院に行くよ。…侑士に会うのと、何より、」
『あ、たぶん。
不二、周助、です。薬剤師で』
「不二先輩が居る」
なんて滑稽な劇だろうか