「えっと…それで、貴方は葵のことをご存知、なんですよね?」
黙ってしまった俺を不思議に思ったのか、雲雀さんは言った。
何度見ても、雲雀さんは葵ちゃんにそっくりなんだ。
「え、ええ。
俺も青学出身で1個上なんです」
「…、そうなんですか」
俺が青学出身だと聞いた瞬間、雲雀さんの表情から一瞬、ほんの一瞬だけだったけど、笑顔が消えて、なんと言ったらいいのか分からないけど、憎しみとか悲しみとかが沢山入り混じった様な顔を、ほんの一瞬、見せた。
「でも、なぜ葵を?1個上、というだけでは、」
「……同じ、部活だったんですよ。俺も、テニス部で、葵ちゃんは、テニス部のマネージャーだったんです」
「、そうなんですか!葵がご迷惑を、おかけしました」
また、一瞬だけさっきより酷くなったそれを雲雀さんは見せた。だけど、隠すのが上手い、というか、これに気付いているのは、多分俺だけだ。
「いえ!め、迷惑なんてっ。…そういえば、親友、でしたんですよね?」
「ええ。私達、小さい頃から、ずっと一緒だったんです。中学までは」
「雲雀さんは、どこの中学、なんですか?」
「…私は、並盛中出身です。青学と迷った、んですけど」
雲雀さんは、そう言って、無理矢理笑った様にして、なんか暗くなっちゃいましたね!と笑って、ちらし寿司を頼んでくれた。
「そういえば、雲雀さんはなんの職業で?」
「ちょっと、親父っ」
「いいですよ。…私、一応、医師なんです」
「医師っ?そりゃあ、頭いーもんだ!」
「いえいえ…」
そう言って教えてくれた。
今まで自分は、並中を卒業後、イタリアに移り住み、大学までそこで過ごし、スキップ制度を利用し、医師や他の免許を取得したらしい。
「じゃあ、なんでこっちに?」
「イタリアンカンパニーのボンゴレってご存知ですか?」
…知ってる。
綾香が、あのボンゴレと関わりがあるかもしれないから、調べるって言ってたし、ずいぶん前だけど。
関係はなし。
あの、ボンゴレ…マフィア界最強のファミリーとは関係は何もなかった。
「えと…河村さん?」
「あ、ああ、知ってるよ」
急に黙ってしまった俺を不思議そうに見上げながらも、雲雀さんは言った。
「私、そこの社員なんです。
今回、同期の者と一緒に日本に派遣されまして。私は兄と共に忍足病院に派遣されます」
「お兄さんも、なんですか」
「はい。お兄ちゃんは、優しくて格好いいんですよ」
「雲雀さんはお兄さんの事、大切に思ってるんだな」
「そうですね、」
そう雲雀さんは微笑み、
「河村さんのお父さんが河村さんを思う様に、河村さんがお父さんを思う様に。親友が親友を思う様に、それぐらいに、兄も私を、私も兄を大切に思っています」
君はもう一度微笑む