「……谷崎、谷崎……ここ、ね」
あの日、私は正直何も言えなかった。私を、信じてくれた人が、あいつらに傷つけられたなんて。
あの日、侑士の話に私は何も言えなかった。谷崎流杉、たった一人の人が私を信じてくれたせいで、酷い目にあう、なんて。
あのあと、雅治は、意味深に、
「ボス、俺に仕事をくれんかのぅ?」
と言って、自室に戻って行った。勿論、綱吉は頷いたけれど。(凪以外に私達が勤務中以外に綱吉をボスと呼ぶ時、譲れない事を言う時だから)
今は、侑士に忍足病院に連れて来てもらった。
谷崎流杉君に会う為に。
先に行っといて?と言われた私は、自力で病室を探した。まだ看護婦の方々に顔を覚えられたくないから。
「谷崎流杉……、やっぱり、この病室ね」
そこは個人部屋で、ドアを開け、入ると、人口呼吸器をつけて横たわる谷崎君が居た。……居た、と言っても横たわっているんだけれど。
「……こんにちは。私が、雲雀葵。まず、お礼を言わせてね?私を、信じてくれてありがとう。…ねえ、流杉君、って呼んでもいいかな?」
ちょこん、と置かれているベット際の椅子に座り、流杉君に話しかける。
昏睡状態でも、話しかける事が大切だって、綱吉が言ってたし、私の時も皆そうしてくれたみたいだから、私も流杉君に話しかける。
「…私達は、帰ってきたわ。復讐をするの。……流杉君はどう思うかな?」
復讐なんて、いけない事だと言ってくれるのかしらね?
それは分かってるわ…。
でもね、
「私は、許せないわ。だから、」
あなたは。あなただけでも、あの人達を許してあげて。
-------ガラッ。
「流杉君ー?謙也くんと蔵が来たでー?」
「…白石、キャラ変わっとんで、って、どちらさん?」
突然開いたドア。そこの先に立つ、
忍足謙也と白石蔵ノ介。
ああ、懐かしい。
あなた達は味方?それとも敵?
―どちらになるんでしょうね?
「お久しぶりです、謙也先輩、蔵先輩」
にこり、と微笑み、かけていた眼鏡を取り、横縛りにしていた髪を解く。
「雲雀葵…あ、篠原葵、と言った方が分かりやすいでしょうか?」
二人の目は大きく開かれた。
「…葵ちゃん、なん?」
「はい、蔵先輩」
「…え、え?マジで?」
「はい、謙也先輩」
驚いて言う二人。にこり、と笑って答えると、
「…なんや、謙也達、また来とったんか」
「あ、侑士」
二人の後ろから侑士の声が言った。二人が部屋に入ると侑士も入って来て、
「んーと……挨拶、したん?」
「一応、雲雀としてもしたし、お久しぶりもしたけど、この二人はどこまで知ってるの?」
台本合わせの始まり