あれから私が皆に嫌われたのは、噂もクスリも効いたんだと思うけど、何より、「夏目綾香を傷つけた」って事だと思う。
綾香は部活中、レギュラーを含む全部員が私を無視してるのをいつも楽しんでいた。だけど、多分一つだけ気に食わなかったのが、リョーマだったんだろう。
「葵さん、メニューのこの部分なんだけど、」
「あ、ここはね、」
「おチビ!やめるんだにゃ!」
「そうだぜ越前!」
「そんな子の相手をする必要なんてないよ」
「何言ってんスか?“桃城”先輩」
「なっ…」
「俺が誰を信じようとあんた達には関係ないし、俺にはあんた達が誰を信じようと関係ない」
「なっ、越前っ」
「…リョーマ、やめて」
「でも、」
「でも、じゃないの。あなたは、ここに居る時間が限られているんだから、余計な事は考えないで、全国大会に行く事だけ考えて?」
「……ちょっと、限られてるってどういうこと」
「…桃城君、先輩方、」
「「「!!!」」」
「リョーマを巻き込まないで下さい。それと、練習、始まりますよ?」
(私が手塚部長に睨まれてるから、早く行って下さい)
私が呼び名を少し変えたら、あの人達は目を丸くして驚いた。そうよね、私も葵から篠原に変わった時驚いたもの。
……そんなに距離を取られる程、嫌われたんだと。
そして、表立った暴行は、夏の大会が過ぎるまでなかった。これはテニス部でなくても、そうだった。そして、夏の大会、リョーマがいた青学の最後の夏は、全国制覇で幕を閉じた。純粋に本当に嬉しかった。皆が頑張ってきたのを、私は知ってたから。そして、門外顧問の南次郎さんの仕事で渡米し、あちらに住むことがきまっていた、リョーマ。それは、私達ボンゴレから日本に行くという任務をリョーマに与えるか、私達が日本に来るという事にならなければ、日本には住まない、リョーマの永遠の旅立ちだった。(旅行や一時帰国は勿論するが)
そして、見送りの日。
青学テニス部に何も言わずに旅立つリョーマを見送ったのはファミリーの皆。そして、竜崎先生。そして、精市、景吾、侑士だった。(雅治はファミリーの方にカウントしてある)
その時聞いたのだが、氷帝と立海の皆は、私を信じてくれると。
1年生らの合宿で3年の付き合いがあるが、まさか、他校の皆が、私をちゃんと信じてくれてるなんて、思ってもなくて。景吾、侑士、精市、雅治しか他校には、私の正体を知る人は居ないと言うのに。(葬式の時は、“篠原”というのは偽名で、雲雀家は名家でそれを学校側に隠す為に偽名を使っていた、と伝えてくれた)
そして、
「葵、」
「ん?どうしたの?リョーマ」
「…ごめん、本当に、俺だけごめん、ごめん…」
「なんで謝るの?リョーマが謝る必要なんて、ないよ」
「……でも、」
「でも、じゃないよ、ね?」
「…うん」
「…心配しなくていいよ?大丈夫だから」
「お願いっ!!葵っお願いだから…!並盛に行ってっお願い!!お願い、並盛に行って、これ以上、傷つかないで」
リョーマは泣きながらそう言ってくれたけど、
私はあの日まで、青学に居た。
まだ綾香を取り巻く、『夏目財閥』と『ラルツォーネファミリー』の事があやふやだったし、クスリのことを放って行けなかった。
あの時の涙を信じればよかったのに