--10年前。
リョーマが青学に入学してきて、私は1年の時から入っていた男子テニス部マネージャーとして、
"篠原"葵として、
雲雀葵として、
リョーマを歓迎した。
そして、4月があっという間に過ぎ、5月
あいつはやってきた。
「今日は転校生が居るからな、入れ」
「はい。…夏目綾香です。よろしくね」
にっこりと笑顔で言ったもは、夏目綾香だった。私のクラスに転入してきた時、私は綾香の何かしらの違和感を感じた。それが、気持ち悪くて吐きそうになった。
一言で気持ち悪い、だった。
直感だけで判断してはいけないと仲良くしようと思ったが、誰にでも笑顔を「振りまいて」いて。そしてその笑顔は、なんだか気持ち悪くて。私が一方的に嫌うだけならいいだろうと思って、私はあまり彼女に自分からは関わらなかった。
だけど、そんな私に限って彼女がごみ箱とかを蹴り倒すところとかをみてしまったりしたものだ。ああ、性格も悪いなって実感した。
それで、何故かあいつはテニス部マネージャーになった。
仕事はまあやってくれた。ドリンク作りのみだったけど。私が今まで作ってきたレシピを教えて欲しいと言われたが、ちょうどその時洗濯物を干していて、ちょっと待ってて?と答えたら、自分で作ったから飲んでみて?と後で味見させられた。それは、市販のスポーツドリンクにレモン汁を垂らしただけのドリンク。まあ、体にいいことに変わりはなかったから、いいと思うけど、と言い、でも、と言いかけた途端もうあいつは皆にドリンクを渡していた。
まあ、たまに私が作っていたし、リョーマ以外誰も私に言って来なかったし、皆が好きな味ならいいかな、とか思っていた。勿論、リョーマは別にいつものを作ってあげてたけど。
そして、あいつが入部してから、2週間が経った日だった。
「葵ちゃん」
「ん?どうしたの?綾香ちゃん」
あいつはいつも通り、ドリンクしかやらなくて、だけど私は部室の掃除をしてる、そんな時だった。
そして、本性をあらわにした。
「本当、あんた何様?あんためちゃくちゃムカつくんだけど。あたしの方があんたよりずっとずっと可愛いはずなのになんであんたなんかが皆に好かれてる訳?あたしが好かれるのはすごくよく分かるけどね。本当意味わかんない。クラスの皆も学校の皆もレギュラーの皆も教師達でさえ皆あんたの悪口なんて言わないし、なによりなんでリョーマ君はあたしに靡かないのにあんたにはなんであんなにべったりな訳本当意味分かんない。何であんた皆から好かれてるわけ?なんで、あんたなんかが好かれて、あたしは?何で何で何で何で何で何でイミわかんない。…ねえ、だからさ、」
あんた、
ケ シ テ ア ゲ ル
そう言ったあいつの笑みは
醜く、歪んでみえた
十年前のこと