「それで…あの子は、」

「…篠原は、自殺して、死んだよ」

「……………え?」

「…篠原は、綾香を、」

「綾香って、どなたですか?」




そう聞けば、気まずそうに綾香が視線を逸らした。私達に遠慮するかの様に、一歩後ろに下がる。履いているジーンズの生地を握り締めていて、そっと桃に背中を押されて、俯きながら言った。




「綾香は、私です…」

「あ、そう…なんですか、」




この不思議な光景に気持ち悪すぎて、逆に気の毒そうな声なった…。結果的にはいいわよね?



「そう、綾香をいじめていたんだ。綾香は学校中の人気者でね。たぶんそれに嫉妬したんだろうけど。それで、皆に嫌われて、」

「そして…自殺?」




不二先輩の後を凪が引き継いで言った。そう言えば、皆が頷く。


………嘘ばっかり。ていうか、なんで、私が人を嫉妬しなくちゃいけないの。




「本当、最低な、奴だにゃ」




…悔しい。

なんで、私、が、




「そうなんですか…。綾香さん、でしたよね?」

「は、はい、」




…やめてやめてやめてやめて。気持ち悪い。
未だに、先輩達と、桃と海堂を、仲間を騙しているだなんて、気持ち悪い。



「大変でしたね…。古い友人がご迷惑をおかけしました。……それにしても、」

「いじめなんて、最低な事」

「そうよね、凪。…でも、あの子は、そんな卑怯な真似をするくらいなら、面と向かっていくと思うんだけど……じゃあ、私達はこれで。また、縁がありましたら、お会いしましょう?」





そして、私と凪はテニスコートを去った












------悔しい


苦しい…



あんな女に堕しめられ、

消えない傷痕を残され、

仲間だった人達に裏切られ、

中学の2年間を、


奪われた。




10年経っても変わらず、あの人達は、私が悪者だと信じたままだ。私の事を憎く思ってる。




…ああ、悔しい。苦しい。憎い。



不公平。理不尽よ。





……私だけ奪われて、あの人達は自分の罪に気付かないまま、笑い合ってる








なら、私も、奪って、いい?







「凪、」

「…なあに?」

「‥復讐、ていけない事、かな…?」











奪われたんだから
(序章編終了)

×
「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -