テニスコートに近付くにつれ、だんだんと大きくなる音と声。
今日は誰も居ない筈だったのに。
隣に居る凪が心配そうに私を見る。ああ、大丈夫、大丈夫だよ。
「葵……」
「…ねぇ、凪?覚えていると思う?覚えてると思うんだ、私は。たぶん、まだ嫌われてる可能性が高いけど。…それでも、進まなくちゃいけない、違うかな?」
「…分からない。でも、あの人達は、自分の罪に気づき、償わなくちゃいけない」
凪がそう言った時、
「あれ?誰ですかね?」
久々に聞く声。
「さあ…。今日は俺達しか居ない筈だし…」
トン、トン---トン。
「…葵、ボールだ」
「そうだね。あ、あの人達のかな?」
声が聞こえ、私のスイッチが入る。私は足元に転がってきたテニスボールを拾う。そして、青学元レギュラー達を見る。
さあ、気づくかしら?
---私が“篠原葵”と同一人物だと。
「あ、ああ。ありがとうございます」
不思議そうな顔をして、手塚部長はボールを私から受け取る。その顔に私も不思議そうな顔をしてみる。
「…ねぇ、やっぱり入っては駄目だったんじゃない?」
「そうかな?休日だし、誰も居ないみたいだから…大丈夫だと思うけど」
「あ、今日は僕達が集まっているだけで、他の部活とかでの、生徒達は居ないんです」
「あ、そうなんですか…えーと、」
「あ、僕は不二周助。この近くの病院で薬剤師をやってます。よろしく」
「では、不二さん。…皆さんは、テニス部、ですか?」
「勿論。僕達はテニス部。この学校の卒業生だよ」
久しぶりすぎるあなた達も