「あー!俺めっちゃ腹減ってんだけど!」
「ははっ、がっくんブン太君みたいー」


ジローにけらけらと笑われて、かちんと来たが腹は減った。うわなんで今日に限ってお菓子なんにも持ってないってどうなのこれ!なんと今日は部活のあとに出演するドラマの顔合わせがあるらしいのだ。岳人、と渡されたのはイチゴ味の飴で。飴ちゃんでも食べてな、と侑士に言われた。飴かよ、ないよりマシだけど。とりあえずは、サンキュ、と言って口に放り込んだ。直後にかみ砕いてやったけど。


「で、跡部。今日は顔合わせだって?」
「そうだ。一応、台本に目通せよ」


宍戸が跡部に聞く。跡部は優雅に足を組んでいて携帯を触っていたが宍戸の声に視線を上げ、不適に笑った。…そうだ、台本。台本読んどくかな、少しは。そう思い、侑士に入れてもらったので絶対に鞄に入ってるはずの台本を探す。あ、あった。


「これだろー?」
「【復讐のサジェスト】。これって大ヒット小説なんですよね」
「俺も持ってます」


チョタがそう言えば若も同意する様に言った。へえ。俺どんな話か知らねえんだけどな。そう思ってると、ジローが同じことを言った。すると、


「復讐の話やよ。中学の時、嵌められた子が10年後に嵌めた子と信じてくれなかった仲間に復讐する話」
「おっしーも知ってるのー?」
「おん。知り合いがな、送り付けてきてん」


苦笑いして侑士はジローに答えた。へー。知り合いが送り付けてきたのか。…はた迷惑だな。すると、ジローが詳しいことと続きをせがんだ。宍戸も聞きたいと言うとチョタも同じ様に言った。…あいつそのうちガチホモになるんじゃねーの、ほら四天宝寺に一人居るし。そんな風に考えていると、


「主人公は、名字を偽ってある中学に通っていた女子。当時中2」
「…跡部さん知ってるんですか」
「原作を読んだんだよ」


若が訝しげに聞くと跡部は携帯をパチン、と閉じてふ、と笑った。あ連絡着いたん、と侑士が言えばああ、と跡部は頷いた。すると、跡部はそのまま俺達を見て話の続きを促した。


「…その女子は、テニス部のマネージャーで、学校から虐められていました。理由は幾つかありましたが、大きかったのは、もう一人のマネージャーを虐めたから」


続きを引き継いだのは若。そして侑士も続けて言った。


「だけど、それは、もう一人のマネージャーの嘘だったんや。嵌めたっちゅー訳やな。で、主人公は屋上から自殺に見せ掛けられて突き落とされるんや」
「…運がよく、大怪我で済んだ主人公は、葬式を兄に頼みます。兄は隣町の中学で風紀委員長に就任していて、家も有名な名家だったので葬式は済みます」
「で、ここで大切なんは、この主人公が兄含め隣町の友人らの仲間やったってこと。この隣町の友人らはイタリアンマフィアの最高峰の時期ボスファミリーで主人公も一員やった」


そう。それでファミリーは復讐をしようと言うが、主人公の説得によりそのままにする。そして、10年後。マフィアとして働く主人公達は日本に任務で帰ってくる。
跡部がそう言うと跡部の携帯が鳴った。悪ぃな、と言って跡部は電話に出た。


「…帰ってきた主人公はトラウマを克服しようと自分が通っていた中学に行きます。そこで昔、自分を嵌めた子と信じてくれなかったテニス部レギュラーに再会します」若はそう言って、ふう、と小さくため息をついた。なんか、と切り出したのは宍戸で皆は宍戸を見た。


「…なんかよ、すげえ、可哀相だな主人公」
「…ですね。裏切られた、んですよね?そして、10年後に再会するんですから」
「…んー、でも、まだ続きあるんでしょー?復讐なんだから」
「マジかよ、侑士」


侑士は、おん、と返事をして、続きを話した。


「再会したそいつらは、主人公が10年前の死んだはずの主人公と同一人物やと気付かない上、10年前の主人公の親友を名乗った主人公に偽りを伝えるんや」
「偽り、と言うのは虐めについてのレギュラーが信じる事実とか自殺のことですね」
「まだ気付いとらんかったことに主人公は悔しさを覚えてまあ、あとは色々爆発したんやろな。復讐を決意して復讐をしていくっちゅー話や」


あ、今のケンヤぽかったな、と呟いた侑士に馬鹿か、と言っておいた。うわ、むちゃくちゃ重いじゃんかよこのドラマ。するとジローが台本を見たまま言った。


「…俺達敵役じゃなくてよかったねー」
「どこがやるんだよ?」


跡部からキャストは半分ぐらいはテニス部メンバーだと聞いてる。多分敵役、は、テニス部メンバーだよな?すると、ジローは苦笑いして、


「青学」


うわ、可哀相、青学。そういや青学のマネージャー、モデルやってて少しブリっ子だったな、とまで考えてなんか嫌になって考えるのやめた。あ、跡部電話終わったみたいだ。ん?樺地に携帯を渡して、もう一つの携帯を受け取ってメール、って、メールはや!ていうかあいつ何個携帯持ち歩いてんだよ、クソクソ!
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