「おい、お前ら。今日は3話、ぶっ通しで撮影入ってる。忘れんじゃねえぞ」


朝練終了後。跡部さんがそう言った。大会の練習、とかはもう既に夏の大会が終わっているからしなくて済む。だからなのか、部活を1、2時間で切り上げ、撮影に行くらしい。


「3話ぶっ通しってことは……」
「何時までかかるか分からんなあ」
「…そういえば、1話目は2時間スペシャルでしたね」


そう俺が言えば、マジかよ若と向日さんがはしゃぐ。ていうか、この人達台本見てなさそう。すると、宍戸先輩が台本を見ながら言った。


「俺、あのあと、原作買ったけどよ。台本の葬式のシーン、入ってなかったぜ?」
「ああ、俺達他校は登場まで時間があるからな。1話目で葬式をやることで視聴率を取ろうってつもりらしい」


そうするすらと言った跡部さん。この前の顔合わせの帰りに聞いた話だが、どうやら 跡部さんは監督と知り合いらしく、前もって色々と話を聞いていたらしい。


「なんでお葬式を先にやるのー?
「そういえば葬式の話は原作に元々入ってなくて、あとから出た+αって言う番外編集に載っていましたよね」
「へえ、そうなんだ。お葬式ってことは主人公の子が死んでからのお話ですよね、宍戸さん」
「ん?ああ、確かな。俺も台本しか読んでねえけど、葬式って他校もほとんど出るんだな」


そう答える宍戸先輩の声を聞きながら、そういえば、他校は葬式を入れなければ中々出番がやってこないからな、とか考えていたが、不意に思い出した。葬式は、特殊演出が必要だろう、赤ん坊とか、人が消えたりなんだり。…今思えば葬式の時だけ、ちょっと話の方向性が違った気がする。






放課後。跡部さんが用意したリムジンに乗って青学へと向かう。どうやら第1話はやっぱり、あのシーンから始める様だ。すると台本を呼んでいた向日さんがうわあ、と嫌そうな声を出した。


「岳人、どないしてん」
「…台詞多い…」
「…それ言うたら青学の方は、リンチ紛いもせんとかんし、台詞は岳人以上やし、大変やで?」
「でもよお、忍足。青学は多いっちゃ多いけどよ、やっぱりあの沢田って奴らの、ボンゴレ?だったか?」
「はい、そうですよ、宍戸さん」
「ボンゴレの方が多いだろーが」
「ああ、あいつらなら」


そう言った忍足さんはニヤリと笑う。どうやら忍足さんもボンゴレの人達を知っている様で。すると今まで黙っていた跡部さんが口を開いた。


「あいつらは、仕事に手を抜かない」
「俳優は初めてって言うとったけど、毎日演技してるようなもんやし」
「……忍足、話し過ぎだ」


そう跡部さんに言われた忍足さんは、ちとしゃべりすぎたみたいやなと苦笑いをしてみせた。
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