Episode8 [ 8/12 ]

精市君がサーブを打ってから試合は中断してしまい、私達が座る観客席もがやがやと騒がしさを保っていた。隣に座る麻友美は大したもんねと笑ってみせた。…正直言うと、あれは凄いのかな?というのが本音。サーブでコートにボールが食い込むのはおかしいのかな?…でもサーブが毎回コートに食い込む、…めり込んでいたら試合にならないよね。…でも、私、テニスって全然知らないし、ルールはよく分からないし、と思っていれば、


「麻友美、弟君が」
「ん?」


紳士な柳生君、だったかな?と一緒に麻友美の弟君が来ていた。周りの子達は顔を赤くしてたり、びっくりしてたり。ばつの悪そうな顔で弟君は麻友美に話しかけた。柳生君は私にすいませんと苦笑いをして言ってくれた。…でも、なんで苦笑いで私に謝るのかな?…さっきの試合は終わってしまったのか聞きたいけど、緊張というか、…怖い。…人見知りたから、と言いたいけど、年下と言えども初対面の男の人はちょっと話しにくい。とりあえず、大丈夫ですと柳生君には返しておいたけど、失礼になってないかな?…精市君の部活仲間だし、レギュラーということは精市君とも仲が良いはず。…どうしよう、なんだこいつとか思われてたら。そんなことはを考えてたら、


「はあ?!あんた本気で言ってんの?」
「じゃ、じゃから、幸村の調子が良すぎるのは少なからず彼女さんに関係があるはずじゃって参謀が!」


麻友美にジャージの襟元を握り締められた弟君と凄い笑顔で弟君の襟元を握り締める麻友美が。…っておかしいでしょう!だ、大丈夫なの、一体…。内心はらはらとなっていれば、麻友美はさっと弟君の襟元を離して、ちっと小さく舌打ちをした。…もうすぐ方言出てきそう。あんたなまえが来てること言ったの、と低い声で言った麻友美に弟君は勢いよく首を横に振った。参謀の予想、と言った弟君。…参謀って一体誰だろう?参謀って名字なのか、あだ名か…。偉い人なのかな、とか考えていた。すると、麻友美は私の方を見て、小さくため息をついてから優しい顔で行こっか、とだけ言った。







部室に堂々と入った麻友美はにこにこと笑ったまま。赤い髪の人やもじゃもじゃ君は目を輝かせていつ。麻友美、綺麗だもんね。精市君もやっぱり、なのかなって思って精市君を見れば、真っ直ぐにこっちを見ていて、視線があった。そして、ふわりと笑った精市君に顔が赤くなりそう。…もしかしたら、もう赤いかもしれない。姉貴!と弟君が焦って麻友美に近寄る。柳生君は、さあ入りましょう、と行って手は握らなかったけど、部室の方に右手を広げ、エスコートの様に言ってくれた。…え、は、入っていいの?部員の人達が麻友美に視線を集めているから、大丈夫かなと思って部室に足を入れた。


「ちょ、姉貴って仁王のお姉さん!?」
「よろしくね」


麻友美は赤い顔をしてそう言った赤髪の子に笑いかけた。うわあ、と感嘆の声をあげたのはもじゃもじゃ君だ。勘弁してくんしゃい、と小さく弟君が言ったのが聞こえた。…なんか、苦労してる、のかな?すると、ノートを持っていた人が、そちらは?と私を見る。すると、皆の、視線が集まる。やば、い。心臓ばくばく言ってる。ああ、と言ってこちらは、と私を紹介してくれようと柳生君が言いかけた時。


「なまえさん」


優しげな。いつも私が聞く彼の声色。ふわふわとしているんだけど、確かに真っ直ぐと私に届く彼の声。それが聞こえた方向を見れば。もうさっき居た場所じゃなくて。歩き寄りながら精市君はまたふわりと綺麗に笑ってくれている。…本当に顔が、赤くなりそう。


「え、幸村部長のお知り合いっすか?」


興味津々と言った具合にもじゃもじゃ君が精市君に問いかける。はた、と動きを止めた精市君は苦虫を潰した様に、小さくああ、と頷いた。そして、私に今度はいつも見せてくれる笑顔で、



「部活はもう終わりなんだ。送るし、帰りにどこかに寄らないかい?」
「え、い、いいの?」


勿論、と笑って言った精市君は本当に綺麗だった。…だから、精市君のチームメイトが私達に気になるよ視線を送っているのに、しばらくは分からなかった。
111004

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