Episode7 [ 7/12 ]

真田が苛ついていて、ラリーをしたくないと泣きついてきた赤也に変わってコートに立った。俺の方のコートは、観客席と向かい側の方で。サーブを打つ時にちらりと観客席を見れば。隅の方だけど、一番前。そこになまえさんは仁王のお姉さんと一緒に座っていた。

格好いい所ぐらい見てもらったって罰は当たらないだろう。真田に試合を申し込めば、理由を聞かれ、伝えても不思議そうだったが了承を得た。なんだ苛ついてなんかいないじゃないか。どうせ赤也のことだから、何か仕出かしたんだろう?


「さあ、真田、行くよ」
「うむ」


返事をした真田にボールを何回か弾ませてから勢いよく、ボールを打った。パァン!といい音がして直後にドゴ!と音がした。騒がしかった周りの観客も静かになった。まあ、テニスをしていたら集中力とかで聞こえなくなる時も多々あるけど。真田からのリターンはまだ来ない。どうかしたのかと真田に、声をかけようとすれば、真田は青い顔をしてこちらを向いた。


「どうかしたの?」
「…どうかしたのかではないぞ、幸村」


今日は具合でも悪いのか、と真田は言った。え?体調なら悪いというより、よすぎて困るぐらいなんだけど。これもなまえさんが居るっていうのがあると思うけどね。すると、幸村と声がかかる。黙っていたからか、真田が青い顔を伺う様な表情にして聞いた。…てか、お前の方じゃないの、具合悪いの。顔色悪いし。


「ああ、具合は悪くないし、どちらかと言えばいい方だな」
「…だが、力加減が、」


そう言って真田が指差した先。真田の方のコートに食い込む様にコートと一体化したテニスボール。焦げた様に周りが黒くなっていて、隕石が落ちた時みたいに周りが円を描いていた。


「…ねえ、蓮二」
「なんだ?精市」


近くのベンチで赤也の面倒を見ていた蓮二に声をかける。すると、ノートは相変わらず開いたまま、ポールまできて、立ち止まった。赤也はその後ろを何故かびくびくとしながら着いてきた。周りの観客のざわつきは未だそのままで。俺は真っ直ぐに蓮二を見て言った。


「これは、俺の得点でいいのかな?」









その後、俺の質問に答える前に蓮二は体調が悪いのかと聞いてくる。真田と蓮二。二人揃ってどうしたんだろうと思っていれば、蓮二の後ろで赤也がびくびくしながら殺されるとしきりに呟いている。…一体なんだって言うんだよ。訳も分からないまま試合は中断された。開眼した蓮二に言われたんだ、仕方ないよね。まあ、力は俺の方が上だから無理矢理続行も出来たんだけどね。蓮二の後ろから駆けてきた丸井とジャッカル。その二人までもが真っ青な顔をしてるんだkた、仕方ない。ったく、みんな体調が悪いのかって…。体調管理ぐらい俺なんだ、出来て当たり前だろ?とにかくそのまま今日は帰った方がいいと言われ、蓮二がテスト週間で明日からどうせ休みだからと、部活は全体で切り上げ。そのまま部室に向かった。


「で、でもよぃ、幸村君の体調が悪くないなら、どうしたんだよぃ?」
「どうもこうも、何が?」


そう聞けば困った様に皆は顔を合わせ、気まずそうにした。真田が言いにくそうに、


「…今日の幸村は、力加減が出来ていなかっただろう」
「力加減?」
「精市、ボールがコートにめり込んでただろう。いくらパワーSのお前でも、いつもはめり込まないぞ」


そう言えば、今さっき握ったタオルがいきなりちぎれた。え、まさか。


「そこで、考えだんだが、精市。お前の言う通り、体調不良ではないとしたら、他に理由がるだろう?例えば、」


蓮二がそう言った時。ばん、と勢いよく開いた部室の扉。姉貴!と焦った声も聞こえる。入ってきたのは、仁王のお姉さん。堂々と入ってきてどうもと大半の男が惚れそうな笑顔で微笑んだ。流石、仁王のお姉さん。俺はなまえさん一筋だから関係ないけど。苦笑する柳生に困り返った仁王。そして、その後ろから、麻由美、と心配そうな声で着いてきたのが、なまえさんだった。
110904

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