Episode6 [ 6/12 ]

ここならよく見えるよと案内された場所は、ある程度女子で埋まっていた。私達とな同じぐらいの人から中学生ぐらいの人まで居る。凄い人気だなあと見ていれば、麻友美は不思議そうな顔をしていた。どうしたのと聞けば、練習試合でもないのにこれだけ集まっているのが不思議みたい。うん。私も思った。


「そういえばさ、なまえはあの部長のテニス見るの初めてって本当?」
「うん。精市君のテニスもユニフォーム姿も初めて」


比較的見易そうなベンチに腰かければ、麻友美は確かめる様に聞いてきた。私は、テニスをしている精市君に出会った訳じゃないし、最初はしっかりしてるから、大学生だと思ったくらい。精市君は大人びた顔とも言えるから、大1くらいかと思ったんだよね。と初めて会った時のことを思い出していれば、コート内で集合がかかったみたいで、レギュラーだと思われる人達が集まっている。中央にはヘアバンドをつけて肩にジャージを羽織る精市君。隣に立つ帽子の人とノートを持つ人に時々話しかけながら、指示を出しているみたい。レギュラーだと思われる人達の中には、麻友美の弟君やさっきの…柳生君だったかな?も居た。イエッサー!と大きな声が聞こえてから、皆コートに入った。どうやらアップとかそういうのは個人でもう済ませたみたい。

暫く見てれば、髪の毛がもじゃもじゃになってる子が、精市君に近付いて行き、何かを言った。コートでは、さっきまでもじゃもじゃ君とラリーをしていた帽子の人が、赤也!って叫んでいて、もじゃもじゃ君はそれでも話し続ける。精市君はベンチに座っていたんだけど、隣に立つノートを持った人に目配せ。頷いたノートの人に、もじゃもじゃ君のジャージの襟を持ってもじゃもじゃ君を渡した。

「凄い!麻友美、見た?精市君、人一人持ち上げちゃったよ!」
「…それを凄いって言うあんたも凄いよ…」

麻友美はそう言ってはあ、とため息をついた。…え?どういうこと?そう首を傾げれば、また苦笑されてしまった。なんでかは分からなかった。とにかく、精市君が力持ちってことが分かった。凄いなあ、精市君。すると、帽子の人が立つコートに精市君が入って行く。もじゃもじゃ君とノートの人はベンチに座っていた。あ、もじゃもじゃ君が立ち上がってコートに近寄ってく。ノートの人も、それに続く。はた、と見れば他のレギュラーの人達もラリーをやめて、精市君と帽子の人が立つコートを見た。


「試合でもやるのかしらね」
「早速?」
「うーん、じゃないの?」


そう言った麻友美の方を見れば、周りの人達がざわざわとし始めた。真田君が、とか幸村君のテニス、とか。とりあえず、今精市君とコートの中で対峙している帽子の人は真田君って言うんだ、と思っていれば、


「真田って言ったら、副部長よ」
「へえ。じゃあ、今からの試合は部長vs副部長の対決なんだね」


そう言ってれば、パン、とキレのいい音が聞こえた。直後に重い感じのインパクト音か聞こえた。コートに視線を戻せば、そこに立つ二人はラリーをしていた。キレのいい音が続く。すると、ふと麻友美が呟いた。ただのラリーね、と。よくよく見れば、審判席に誰も座っていない。セルフジャッジかなって思ったりもしたんだけど、と続けた麻友美。私はただ、精市君を見ていた。


「ねえ、真田」


ラリーをしている精市君は大きめの声で言ったみたい。私達まで聞こえたから。なんだ、と低い声で、返した真田君。精市君は言った。ざわり、と周りの観客の雰囲気が、変わったのは分かった。


「このまま、試合をしないかい」
「む、構わんが、どうしたのだ?」
「うん、今日はね。格好いい所を見せなくちゃいけないと思ってね」



私はと言えば、だって、と悪戯っ子みたいに笑って麻友美が、ご遠慮をかけてくるまで、固まっていて。麻友美に声をかけられてからは、顔が赤くなるのを、感じていた。
110822

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