Episode11 [ 11/12 ]

どうしかしたのかと首を傾げるなまえさん。本当に。この人は、俺が出会った女性で、最高の女性だと思う。俺はまだ、たかだか16年しか生きていないし、出会ったと言ったって、この学校の中やテニスの世界ぐらいしかないのだから、比べちゃいけないのかもしれない。だけど。この人は、俺の、理想である。

つまりは、俺がベタ惚れしてるってだけなんだけどね。



「…えーと、」
「なんでもないんだ、なまえさん。気にしなくていいよ」
「え、だって、何か…」



苦い顔で弁解しようとする赤也に代わって笑顔で伝えれば、少し不満そうに俺を見上げたなまえさんにどきりと心臓が波打つ。この不満そうな顔は。ただ俺がごまかしたことに寂しがってるとかそういうのではない。これは、おそらく、怒っている。

俺がなまえさんに惹かれたのは、ただ単にこの人が可愛いだけではない。俺に、ちゃんと意見を言ってくれるし、怒ってもくれるし、俺の行動が間違っているのなら、諭してくれる。そして何より、この人は俺のことを、理解してくれる。



「精市君?」
「ああ、ごめんね。…正直に言えば、赤也に嫉妬したからかな。元々紹介するつもりも無かったのに手を握られて。ましてや、可愛いとかほんの少しでも思ったでしょ?」




すると、なんで分かったのときょとんと俺を見上げるなまえさんは俺を見上げる。あはは。周りはそんなこと言うの!?的な悲鳴を心の中で上げてるけど、やっぱりあなたは真っ直ぐに俺を見てくれるし。言いたいことは言ってくれるし。好きだなあ。



「…雅治、帰るわよ。なんか帰り奢れ」
「え。俺人待たしてるんじゃけど」
「ああ、愛ちゃんでしょ。大丈夫、私この前仲良くなったから」
「い、いつの間に!!」
「つーか、仁王彼女居たんだな!」


すると、気を使ってくれたのか。仁王のお姉さんと仁王、丸井が先にそう会話しながら出て行き。ジャッカルは固まっている赤也、真田がノートを握り締めている柳を引きずるよ様にして出て行くのについていきながら、柳生が会釈をして出て行った。



「…わ、私、邪魔だったかな?」



そうやって不安そうに俺を見上げるなまえさんに。少し意地悪をしたくなった。勿論、伝えたいこと、なんだけどね。




「なまえさんはさ、なんでそんなに遠慮をするの?」
「え…?」
「なまえさんは、俺より大人で、そういういろんなことを気にしなきゃいけないのかもしれない。でも、俺にぐらい我儘言ってくれていいんだよ?」
「………」
「俺じゃあ。年下の俺じゃあ。頼りにならない?」



そう聞けば、ばっと俺の腰に手を回して、ぎゅっと抱きついてきたなまえさん。そして、俺を見上げた。…やばい。少し涙目だし。…うわあ、なんかすごいいけないことした気分、罪悪感ってのかな?




「私、…遠慮してたかもしれない。これからは、ちゃんと我儘言うね!」
「うん。ありがとう。その代わり、俺も我儘言うね」
「私のが年上なんだから、精市君ぐらい、がばって包んじゃうよ!」



無邪気にそうやって笑うなまえさんは俺より4つも年上には思えなくて。可愛いなあって思ってたら、なまえさんと目が合って。そして俺達は初めてのキスをそのまま交わした。



まだこどもの俺と、俺より少しだけ大人ななまえさん。
これからがスタートで。色んなことが起きるだろうけど。

それがまた楽しみであったりする。
勿論、なまえさんと一緒だからなんだけどね。

FIN

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