すれ違ってまた | ナノ

▼parttime
とりあえず、決まってしもうたもんは仕方ないし、財前さんも…一応、被害者さん、やし。ということで、私の部屋に上がってお茶でもしながら話をすることになった。


「このさい、何も言いません。その代わり、状況とか財前さんのこととかもう少し教えてください。あと、ルールとか決めましょ」
「けっこう乗り気やん」
「…ルームシェアとか、憧れやったんです。もちろん、女の子同士で」
「…俺は、財前光。四天宝寺大学の大学院生や。理学部」


女の子同士で、というところを強調して言うたら、罰の悪そうな顔をしてから財前さんはそう言うた。


「改めまして、私はみょうじなまえです。同じ大学の医学部の4年で、今は附属病院に研修中です」
「ん。よろしゅう」
「こちらこそ」
「…で?」
「まずは、どうしてこんなんなった経緯?を教えて下さいな」


そう言えば、はあ、とため息をつきながら財前さんは後頭部でガシガシと手を動かしてから、もう一度ため息をついた。


「…俺、普段は大学近くの本屋でバイトしてるんや。長期休みだけ馴染みがやってるホストクラブのキッチン任せられとんねん」
「キッチン?財前さん、アフターどうこう言うてませんでした?」
「それや。…あのアホは、お前顔ええから客取れやー云々言うて、人足りん時はホスト紛いやらせて、そしたら変な女がついたっちゅーねん」


そう言うた財前さんは、嫌そうな顔をしたままお茶を飲んだ。なんなん、その財前さんの馴染みさん。そんな簡単てわええねんか。

まあ、たまにピンチヒッターでホストクラブのホスト紛いやっとったら、固定客ついて、その中で変な女の人が出た、ちゅーこと、か。


「で?俺、事情話したし?今度は、お前が彼氏役欲しい訳教えてもろおうかなあ?」


にやり。そんな効果音つきで財前さんは笑うた。…やっぱり、顔ええ人ってなんかだめなんかなあ。忍足さんは完璧やったけど。


120920
題名は「アルバイト」って意味です
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