すれ違ってまた | ナノ

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帰り道。
今日は忍足さんに設備とこれからの内容を聞いて、白石って言う変態薬剤師に会っただけやったのに時間はもう19時。本当は本屋とか寄って帰ろうと思ってたんやけど、今日はもう家に真っ直ぐ帰ろう、そう思い私は真っ直ぐマンションへと向かった。


「ほなら、頼みます」
「ええですよー。怪しい女の人見かけたら声かけますさかい」


あれ、あの後ろ姿。そう思い思わず足を止めると、その人物が振り向いた。財前さんや。


「…あ、自分、今帰ってきたんか。今日はおおきに」
「いえいえ。困った時はお互い様ですし」


そう言って笑顔を返せば、財前さんも緩く笑みを浮かべた。それを見た管理人のおばさんが、


「あらあ。財前さんとみょうじさんはこういう関係なん?」


と両手でハートの形を作ってみせるので、ちゃいますよと慌てて返せば、にこにことおばさんは笑みを浮かべたっきりで。そして


「恋人さんなら、3ヶ月間、みょうじさんの部屋に住めばええんちゃう?元々お部屋はお隣さんやったんたし、恋人さんなら。それに、色々事情あるし、そうしてくれるんやったら財前さんの部屋はお金取らんし、みょうじさんの部屋賃を割り勘すればええやん」


と、まあ笑顔で述べてくれはった。
…おばさん…そりゃあ、それは理想的やし、私も彼氏役欲しかったとこやし、部屋も余っとるから、好都合やけど、さすがに。



「それ、ほんま?」
「…え?」
「やから、今言うたの」
「……なんか言いました?私」
「理想的で、彼氏役欲しいし、部屋余っとるって」


…思っとることが口に出てたんや…はずかしい…。
まあ、ほんまですねと頷けば、財前さんは少し顎に手を当てて黙った。…イケメンってなにやっとってもサマになるんやなあ。すると、


「ほなら、自分さえよければ、3ヶ月。同居せえへん?」
「…はい?」


イケメンは突拍子のないことがあるみたいです。
120523
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