すれ違ってまた | ナノ

▼introduction
「新人さんの皆さん、こんにちは。ここ小児科での君達の教育は僕がします」


そう言うてにっこり笑った茶髪の男の人に私も私の友人も、研修をともにする同期生は驚きを隠せなかった。なんでかと言うと。その人は、白衣に忍足と書かれたネームプレートをつけた、私達とさほど変わらない年に見えるから。男の人はそのまま笑みを浮かべたまま、


「忍足謙也言います。出身はここの病院の付属の医学部や。んーと、他に聞きたいことある?」


そう聞いてきた。
柔らかく笑みを浮かべている、忍足さんは好印象。…でも、なんか、どこかで聞き覚え、が。あるよーな…ないよーな。


「あ、の」


すると、4人居る研修生の中から一人、男子が手を小さく挙げた。ちなみに、研修生は、男子が2人と、女子は私と私の友人の2人。はい、どーぞ。とにこやかに笑うたまま、忍足さんはその男子に視線をやった。


「お、あ、僕、テニスやっとんたんですけど、忍足さんもそうですよね?」
「おん。そうやで」
「それで、四天宝寺のレギュラーで、しかもあの有名な時代の!浪速のスピードスター言われた!」
「まあ、そうやな。あの時は二つ名つけるん流行っとったんか分からんけど、みーんな二つ名持っとったしなあ。俺も恥ずかしい話やけど、そう言うてたわ」


けらけらと笑うて言うた忍足さん。四天宝寺…。高校の先輩やったんかあ。じゃあ、財前さんと同じ時代、で。すると、友人―遥子が忍足さんに聞く。


「先輩は、テニス、どれくらい強いんですか?」
「んー、そうやなあ」


そう言うてから忍足さんは顎に手を当てて考える様にした。…格好いいからサマになっとるから、すごいなあ。
そして照れ臭そうに笑うてから、


「一応、学校が全国レベルやったし、個人でも高校ならシングルスもダブルスも一応は全国やったな。…ダブルスが得意やな。後輩と組んどったんやけど」



そう楽しそうに笑ってから、左手首につけてある腕時計を見て、少し黙ったあと、


「ほな、案内するからついてきてな」


白衣を翻して、格好よさげに言うた。…この忍足さんは、面倒見がいいんやろなと思える人や。ダブルス組んどったっちゅー後輩の人も、慕っとったんやないかなあ。…そう言えば、忍足さんは財前さんを知っとるんやろか?ちょうど、年代的には忍足さんの一個下が財前さんやから…。もしかしたら知っとるのかも。


そんなことを考えながら、私は研修用の白衣を翻して、他3人と忍足さんの後について行くことになった。


120221
研修内容は捏造の上、見学が主かと。インターンとは違った研修なので。まだ4年生だし。(通常、5年生6年生の2年間で全ての科を回りますが、この付属大学はちょっと違うってことで)
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