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「大丈夫かい、君みたいな小さな子に無茶するねえ」

医者らしいお爺さんは私に氷の袋をタオルで巻いて、頬に当てるよう私に促した。
腫れあがっている頬っぺたに其れを充てると、じんじん冷たさが即座に伝わって殺人的に痛い。涙目の私の口に容赦なく脱脂綿を押し付けた。

「うう……」

「ほら、泣きなさんな、私が苛めているみたいじゃないか」

「すみません……」

子供の感性は敏感で繊細だ。痛みに弱く、それに対してのレスポンスが強くて、膝を擦りむいただけで直ぐに涙腺は緩んで来るし、夜の闇が意味もなく怖くなったりする。
今、涙がこぼれるのは悔しさからだ。

『これで終わり?大きい口叩く割に呆気ないんだね』

そこで視界は真っ暗になった。負けた。負けるのは当たり前だけど、いとも簡単にあっさりと。
その一言で、今まで頑張った来た事が無駄に思えてくる。


『マンマ、マンマお願いが有るの』

『なあに、ミクがお願いなんて珍しいわねぇ、何かしら?』

『ボンゴレファミリーって知ってる?』

『あら、何処からそんな話聞いたのかしら、…………確かにボンゴレの方々にはご支援を頂いていますけれども』

『私、その人たちに会えないかしら?』

『ええ?!』

「これで大丈夫さね、今日は自分の部屋に戻って休みなさい。仕事も直ぐに入らないだろうさ」

おじさんに慰められて、今は人の優しさが温かい。大所帯の教会の孤児としての生活に慣れていて、一人行動がちょっと寂しく思う。これから一緒に仕事するガタイの良い仲間たちは私の独断行動で完全に私を敵対視している。
優しくしてくれたシスターたちには感謝しているけれども、出て行くのに躊躇は無かった。でも、黙って出て来たジェシカやジョシュアは元気だろうか。二人とも怒ってなければいいけれど。

私は試験に合格した。この手に握る封筒にこの基地の出入りの為のICカードと割り当てられた部屋の場所が示してある。

『B3−225A 
私物は全て私室に保管。管理は自己責任。指定区域への無断の立ち入りを禁ずる』

如何に注意事項が事細かに書かれている。
B3−225って何処だ。地下基地は周りが白いモグラの住処みたいで、さっそく私は迷子だ。
気が付いたらベッドの上で、さっきのくるくる頭のおじさんに顔を覗きこまれていたから、どこもかしこも初めて。
右手の法則で右手を伝って歩いてるけど、良く分からない部屋が単一に続いている。
何で他に人が居ないんだろう、と思って誕生日にプレゼントしてくれた中古の腕時計は夜中の3時を指している。昼の3時か真夜中の3時か分からない。
仕方なく、あのおじさんが居る医務室に帰り戻る事にした。場所が分からないだけで、方向音痴ではない。





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