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「い、委員長!」

十歳の私には二倍近くもある男たちに囲まれてその間から、参入者を覗く。

やっと会えた。
この日をどんなに待ち望んだ事だろう。
一目で彼と分かる、凛とした佇まい。野生動物を思わせる鋭く光る切れ長の目。艶艶でちょっとぼさついた髪。幼さの完全に抜けた大人の男性で合わなかった年月を感じさせる。
恭弥さん。恭弥さん。会いたかった。恭弥さん、私はこんな子供の姿になっちゃったけど、戻って来たよあなたのもとに。鼻の奥がつんと痛む。
再会にひっそり胸を躍らせていたが、恭弥さんは真っ直ぐ此方に近づいてくる。

「どうして此方に?!ボンゴレの本部に行かれていたのでは」

「今年はこれで全員?」

委員の狼狽を無視して、恭弥さんはぶすっとしてる。恭弥さんは相変わらず見たいだ。

「君、何が可笑しいの?」
思わず噴き出したら、見咎められて刃の視線で睨まれた。いけない、いけない。でも視界に入れただけで今は嬉しいと思う自分はちょっとおかしいのかもしれない。

「年々質が下がっているみたいだからね。僕が直々に試してやる事にしたよ。使えない犬は要らないんだ。

僕を楽しませて、くれるよね」

其れが合図だった。
目の前の二人の頭蓋に鈍く凄まじい音。正に一撃必殺。二人がタイミングを合わせた様に崩れ落ち、動揺が走る。周りは自分のモノを取り出し、突然の襲撃者からの次に来る攻撃に構えを慌てて取る。私もそれに倣った。
彼の両腕の中で煌めく棒の様な武器は、名前も知ってる。トンファー。

私はスカートの下に手を差し入れ、交差させて指に構える。
私のモノは、これ。ナイフだ。私はまだ体が未熟で力が無い、相手と競っても必ず力負けする。選んだそれで選んだ中距離型の武器。
また、一人脱落した。並の人が恭弥さんを満足させられる訳ない。ぼこぼこにされる前に失神していた方が本人のプライドのためにも良い。
私はだめだ。ここで情けなく一発ケーオーされて、解雇されたらここまで頑張って来たのが水の泡になる。恭弥さんは直々に試すとか言ってたけど、恭弥さんはやると言ったらやる。
あんなに楽しそうに恭弥さんはじゃれている。本場の喧嘩を知らない手合いばかりの新人ばかりだからちょっと不服そうに腕をぐるっと回してる。
そこに死角を狙って一発撃ち込む。受け流されたのは予想通り、逆手に一線を首に引こうとする。恭弥さんは腕を手前にずらす。反動を付けて蹴りつけ、後方に飛んで間合いを取る。

「ふうん、ぴょんぴょん跳ねる。うさぎみたいだ」

恭弥さんの瞳孔が煌めく。そう、その顔だ。その生き生きした、獲物を追い詰める獰猛な表情。

「嬢ちゃんだけ、一人占めはいけねえな」

一際体格の良い男が直線攻撃を横から受け止めてくれた。
しかし私は興を削がれた気分で、男に容赦なく振り向きざま遠心力を使って腹に回し蹴りを叩きこんだ。
夢見まで見た感動の再開に外野は必要ない。

「………どういうつもり?」

邪魔者をナイフの柄で昏倒させると、恭弥さんは怪訝そうな顔で私を見た。

「Mr.ヒバリ、私はあなたに会いたくてここまで来たんです」




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