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「雲雀さん、俺の言いたい事分かってますよね」

雲雀恭弥は不機嫌だった。
今朝早々に呼び出しをボンゴレボス直々に食らった雲雀は、深い睡眠から強制帰還させられて、おまけに詰まらない小言をねちねちと、痛く御立腹だった。憮然とした表情で上司を見下ろす眦には低血圧から来る早朝のイライラ感と眠気が共同している。

切れ長の目に滲ませて、雲雀が分類する所の草食動物、今は遺憾ながら自分よりも立場の上の、沢田綱吉を見下ろす。沢田綱吉はドンらしくその座に腰を据えて、渋い顔をしている。雲雀は沢田の言う事が一々理解できない。非効率な感情論理に雲雀は理解もしなければしようともしない。興味が無い。この男の下で甘んじているのは、沢田、と言う人間が興味深い噛み殺しがいのある、面白い人間だと認めては居るからだ。沢田は、いつの間にか雲雀を軽々と越え、その実力、手腕は幹部全員が認めている。あの、六道骸までもだ。初めはこの男と戦いたいがために、赤ん坊の甘ちゃんグループプラスアルファと一緒にまさかはるばるイタリアくんだりまで来た。しかし、未だ決着はむやむやに、雲雀は並盛の風紀委員会を核とした財団を設立、直々に群れる草食動物を噛み殺し、平伏させる。
沢田綱吉は真っ直ぐと雲雀の目を見る、普段はよわよわしい癖に変な所で頑として譲らない所、苛立ちもするが面白いと思うのだ。


「報告した通りだよ。僕を朝っぱらから呼んだ用件はそれかい?」


面と向かっての説明が手間だから、書類にして早々送ったと言うのに何の文句が有ると言うのだろうか。
雲雀はしょぼしょぼする目を辛うじて開けてる状態で、半眼で早く用件を言えと沢田を睨む。沢田は如何にも大事だと帰りとそうにする雲雀に訴えた。


「勝手な事をされては困ります。捕虜の処遇は俺を通してからと言う決まりだった筈です。
詰問に応じなかったからって、殺すなんて」

書類に不備でも有ったのかと思いきや、論点はそこか。雲雀はいつもの沢田の病気か、と如何でもいい事を訂正する。


「違うよ。聞いてるうちに動かなくなったんだ」

「拷問したってことですか!?」


成り行き上そうなってしまったと言い訳すれば少しは五月蠅くなくなるかと思ったが逆効果だったらしい。
もう後ろ二週間以上前の話を穿り出されても、雲雀の中では下っ端も下っ端、狩りにもならなかった手応えのない山などとっくに記憶の遥かかなただ。
乗り出すツナを取りあわず、眠気に逆らわずくあっと大口を開けて欠伸をする。


「君も相変わらず甘いね。アレに何人の部下を殺されたか君は分かってるの。
君の部下の仇を取ってあげたんだから、感謝ぐらいしてくれてもいいと思うんだけど?」


「雲雀さん、俺たちは復讐者じゃないです。外道の道でも、きちんとした秩序に生きる者でなくてはいけないんですよ。あの捕虜にはきちんとした手続きに乗っ取った処遇を与える必要が有ったんです。それに、もしかしたら情報で価値が有るかもしれなかった。なのに、雲雀さんの勝手で其れが潰れた訳です」


沢田が熱を入れて、理由を説くが雲雀にはどこ吹く風。基本、マフィアだのオメルタだの雲雀には如何でも良い事だ。沢田の話は半分寝た状態の脳の右から左に流れていく。


「とにかく、雲雀さん、それはあなたが決める事では有りません。決定権は俺にあります」


気まぐれに勝手を許して統率を乱せば、ファミリー全体の足並みも乱れる。
沢田の表情も険しくなる。





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