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そうして、目覚めた時、

「………!!」

私は声にならない悲鳴を上げた。男の寝顔が、直ぐ近くにあった。
眠る前の自分の所業を一気に思いだして、一人で顔を真っ赤にする。
錯乱していたとしても、私、見知らずの人に、しかも、男の方に、何ということを……!猛烈に恥ずかしい。
悶えながら、未だ熟睡している金髪の男の人を見る。
あれ、もしかして、ずっと、この人一緒に居てくれた?
男の人の腕はなお、私の方に伸ばされていた。
寝た私の傍にずっと居る必要なんてこの人は無いのだろうに、私の尋常じゃない怯え様に、心配してくれたのかな。優しい、人だ。私は胸が熱くなる。

辺りを見回してみる。白いカーテンで周りを囲まれていて、部屋全体は分からないが病室のようだ。少し肌寒いので、ぴんと張った空気にその部屋が随分大きい事を悟る。白いきちんメイキングされたベッドがずらずら規則正しく整列している。そして特有の清潔感を感じた。
一番端のベッドにいる私は全身包帯だらけだった。包帯で覆われている腕を動かしてみる。痛い、すごく痛い。あんまり動くのはやめとこう、と思う。
つきん、と米神に痛みが走って違和感を感じて右手で額を触ると、包帯の感触がする。

あ――――昨日殴られたんだっけ。
頭の鈍い痛みと共にこれまでの有り得ない事がぐるぐる頭で再生される。
なんか起きたら見知らぬ変な部屋にいて、強面のスーツのオジサンたちに囲まれて捕まえられて…それから…それから。
その時の恐怖を思い出して思わず身を縮こませる。痛いぐらいに手元の毛布を握りしめた。傍らで眠る男がもそりと寝返りを打つ。

だって、何もしてないのに怒鳴られた。殴られた。本当に怖かった……。

鼻がつんとして涙が出そうになりぐっとこらえる。
泣いたら止まらなくなりそうで嫌だった。

「ん………、起きたのか?」

私の動く気配に気づいたらしい、金髪の男の人は起き上がって眠気眼で両目を擦った。
蹲っている私に具合が悪いと誤解したらしく、慌てて起き上がって待ってろよいいなと私を諭し、騒がしく私の傍から居なくなる。


暫くすると、シャッとカーテンが引かれる音がして、顔を向けると黒髪の人と――さっきの金髪の男の人が戻ってきた。
暫く一人で考えていた私は少し冷静になっていて、かけ込んできた二人をまじまじと観察する。

金髪の人。私に優しかった、男の人。よれたジーパンでTシャツ、上に白いガウンをはおったラフな格好で、年は若い。二十代前後ぐらいだろうか。金髪で、筋の通った高い鼻、大きな目、整った顔立ちは紛れもない外人さんだ。痩せているように見えるがしっかりした体つき、とりあえず、なんて言ったらよいのか、超絶、かっこいいな。
黒髪の方は見なれた東洋の顔でキツイ釣り上った目で私を見ていた。白衣を着ている。そう言えば、この人にも随分失礼な態度を取ったような………。恐怖心は嘘のように消え去っていた。
落ち着いた様子の私に二人は安堵のため息を吐く。驚かさないでくださいよと金髪の方は何故だか責められていた。


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